■机上で作られた介護の行政? 10年目のグループホームが抱える問題

ウチの母の場合、最後の3年間は「グループホーム」という施設でお世話になった。4年間の自宅での介護から解放されて、本当に助かった。

これは介護がメンドクサイからって理由じゃなくて、認知症介護の場合、本人から一瞬たりとも目が離すことができないからだ。在宅介護の時はまさに仕事ができないという状態だった。言い方は良くないかもしれないが、認知症は何をしでかすか分からない。ウチの場合は古い家でガスだったから、火が最も怖かった。それとトイレの含めた水回り。

ガスは元栓を締めれば安心だが、水回りはそうはいかなかった。一度、本人が夜中に目覚めてトイレを使い、下着その他をトイレに流してしまったことがある。それもおかしいと感じた本人が、何度も水を流したからトイレは当然、廊下まで水浸しになった。

だからおちおち寝てもいられない。当然昼間は家政婦さんを頼んだり、ショートステイや、デイサービスに行かせて時間は多少作れたが、結局夜中は身内だけでやらなきゃならない。まさに寝ずの番をしなきゃならなかった。

グループホームへの入居が決まった時は、心から助かったと思った。ちなみにグループホームというのは、認知症対応型自立支援施設というヤツだ。軽度の認知症は補助があれば、身の回りのことは自分自身でできる。入所した当初、飯時前になると、おじいさん、おばあさんが分担して準備をしているのは、ナカナカ微笑ましい光景だった。その中で母も包丁を使っている姿をみて、とっても嬉しかった。

しかし自分のことは自分でやるという理念には賛同できるが、この施設にも最近新たな問題が露出してきている。

オレは世話になった恩返しで、そのグループホームでのイベントや会議にも、今でも時間があれば出席するようにしているのだが、今では前述したような本人たちによる食事の準備は行われていない。

それは入居者の認知症状が進んでしまって一人でトイレを使えなくなっていたり、歩行が困難になっていたり、寝たきりになってしまっている方たちばかりだからだ。

だから介護職員一人にかかる負担も増えている。その上給料はお世辞にも良くはない。介護現場は慢性的な人手不足だ。

研修で新設したグループホームに見学に行った、オレと親しい職員が「ウチもかつてはあーだったなぁと思い出しましたよ」と寂しそうに言っていた。

新設グループホームは、入居者がまだ軽度の方たちばかりだから、何とかその本来の形で運営できる。でも10年経ったグループホームは、何ら特別養護老人ホームと変わらない状態になる運命なンだ。

まさに机上で作った仕組みなんだなぁと感じた。

今、政治家は待機児童とか保育園なんかには熱心だけど、老人介護の話を聞くことはあまりない。現場は待ったなしの状態だ。行政による対応は大きく遅れていると思う。

自分たちもいずれは同じようになるのに……。

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