■石破氏は日本経済の売上高や賃金の動向を事実誤認している?

ここまでだけでも相当に経済認識で間違っていると断じざるをえない。まず日本経済全体の「売り上げ」を、最新の経済センサス・活動調査(平成28年)で確認すると、平成27年(2015年)では、全産業売上高1603兆4638億円、付加価値額294兆7949億円であった。他方でこれを前回調査の平成24年(2012年)の調査と直接比較すると、全産業売上高1302兆2523億円、付加価値額242兆6658億円である(統計調査の手法に違いがあることに注意は必要)。

この数字をみると石破氏のいったように売上高が減少しているどころか、むしろ大幅に増加している。また賃金の動向をみてみると、名目賃金(全産業の現金給与総額)は現状で21年5か月ぶりの前年比3.6%という大幅上昇である。この名目賃金の伸びを反映して、実質賃金も同じく21年ぶりとなる2.8%の増加となって表れている。失業率の低下や有効求人倍率の上昇など雇用の改善が名目賃金の増加になって結実しているわけだ。

実質賃金は、名目賃金を物価水準で割ったもので、現在の物価水準がデフレではないにしても低い水準であるために、実質賃金が高くでているという指摘はあるだろう。だが、仮に物価水準の変化率を前年比2%でとった場合でも、やはり実質賃金は1.6%の増加であり高めの水準であることは変わらない。しかもデータを素朴にみれば、名目賃金については2017年後半から上昇傾向にあり、また同じく実質賃金の上昇トレンドを生み出しやすくしている。

石破氏が『政策至上主義』で提起した売上高や賃金動向の見方は、彼の誤解であるか、または最新のデータを認知していなかったのかもしれない。

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