■システム優先のあまり、新元号が事前公表されてしまう無礼

また、政府は新元号の発表を新天皇の践祚(せんそ)及び即位の一ヶ月前を想定していると公表しています。つまり新元号の事前公表をするということのようです。これは今上陛下の御代である平成の時代に、次の新しい天皇の時代の元号を発表するということなのです。「なるほどね」とスルーしてしまいそうですが、多くの問題を含んでいるようです。

皇室問題に詳しく、自身も神職家系である【國の子評論社】横山孝平 社主に今回の問題を解説して頂きました。

「我が国の元号は天皇と臣民たる国民の歴史です。その上で一世一元、つまり御一人の天皇に一つの元号とする大原則は『元号法』によって明かにされています。従って新元号の公表を新しい天皇の践祚前に行うことは一世二元となり、当然ながらそれを問題視しているのです。

そもそも元号は明治天皇、大正天皇、昭和天皇というように天皇陛下の生前の御聖徳を讃え、諡(おくりな)となります。従って今上陛下の御代に次の時代の元号が存在することはあってはならないのです。

今回の御譲位と践祚・御即位によって時代が変わる訳ですが、我々の目に見えるところはごく一部であり結果なのです。宮中では幾つもの儀式が催行なされ、神の業(わざ)によって御代替わりが行われるのです。これは国家的神事だと云って差し支えありません。決して政府機関が主体となって御代替わり、即ち改元が行われるのではありません。

改元がもたらすであろう生活への支障として、役所や会社での新元号への移行が挙げられます。先もって公表することで対応しろというのはあまりにも短絡的過ぎます。それは利便性のみ追い求め、結果伝統を棄損することに繋がりかねません。ならば政府主導の下で明確な手立てを示すべきです。

我が国は戦後の73年という時間をかけて多くの伝統的なことを排してきました。それは誰も否定できないでしょう。その排した伝統は一日も早く取り戻す必要があります。もちろん『伝統的であること』『伝統を守ること』と、時代錯誤であることは全く別ですから、その辺の勘違いは注意が求められるところです。

天皇は日本そのものであり、皇室の伝統即ち日本の伝統です。我々一人一人がこの件に問題意識を持ち、皇室の伝統や神事に敬意を払う。以て今上陛下の大御心に感謝し、新しい天皇の御代を日の丸とともに祝うことを願っています」

前述した影山正治氏の教えを継承する大東塾 不二歌道会は『元号は天皇と共にあるもの。新元号の事前公表は新しく皇位を践まれる皇太子殿下に対し奉り無礼である』とし『歴史的にも本義に照らしても不可であると断ずる』『政府には正道を誤らぬようこの点に留意した慎重な検討を求める』と声明を出しています。

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