プロインタビュアーの吉田豪が、いまもっとも旬で、もっとも注目する人物に直撃するロングインタビュー企画。今回のゲストは、低予算ながら大ヒット上映中の映画『カメラを止めるな!』で旋風を巻き起こしている上田慎一郎監督。実は上田監督と“因縁”があった吉田豪が、上田監督の人生を全3回にわたってじっくりと掘り下げます。

◇ ◇ ◇

──いまはどう思ってるんですか? そのとき無駄な道を歩んだな、みたいな思いはあるんですか? あれはあれでプラスにはなっているという解釈?

上田 あれはあれでプラスになってるなとは思ってますね、結果論では。ちゃんと映画を作り始めたのは25歳からなんですけど、真っ当に18歳で高校を卒業して映画の専門学校とか行ってやってたら、こういう映画を作ってない気がするので。

──ちゃんとした映画作りのノウハウが叩き込まれて、ちゃんとはしているけどそんなに個性のない映画作りになっていた可能性がある。

上田 映画とはこうあるべきだっていうのを学んでないからよかったんだろうなっていうのはあります。中学校の頃からハンディカムで映像を撮ってたんですけど、映画を観て撮って、感覚と体でずっと映画を撮ってた感じなので。そういうやり方をしてたから撮れた映画だなっていうのはありますね。今回だって最初の37分ワンカットは相当反対されましたから、反対されないとダメなんだと思いますね。

──過去の行動を見てると全部それですよね。そういうの見れば見るほど反対するのが無駄というか、余計にエネルギー与えるだけだから注意するのはやめたほうがいいんだなって思います(笑)。

上田 そうですね(笑)。逆境がホントに好きなんだと思います。

──mixiの最後の書き込みが好きで、「あ、最後にまた暑苦しい事書いていいですか?」「さぁ、上田慎一郎よ。(俺の本名です)情熱の意味を超えていけ。青春の枠を超えていけ。いきどまりを超えていけ。不可能の先で笑ってやれ。真っ赤な翼生やして、不可能の先まで、ぶっ飛んでいけ。苦しみも、悲しみも、喜びも全部ひっくるめて、俺は走っていきます。成長していきます。一生青春!!!!!!!」っていう。

上田 いやぁ……エグいですねえ(苦笑)。だいぶエグいです。でも、そういうのに似たようなことはたぶんいまでも書いてるんで。

──「一生青春!」感はまだあると思うんですよ。

上田 あると思いますし、ちょいちょい出しちゃってますね。痛いっていう感じを俯瞰した視点も入れつつ、いまもそういうことしますけど、そのときは真っ直ぐですからね。その書き込みも、わりと時間をかけて書いてるはずなんですよ。勢いで書いたわけじゃなくて誰かに響かせようと思って書いてはいるから。そこが逆に恥ずかしいですよね。ちゃんと構成して書いてるなっていうのが。

次ページ:ディズニーシーで泳いで校長室を破壊