怪しい会社、ネットワークビジネス……

上田 それで東京に来て、最初にやったバイトが日給1万円の飛び込み営業で、これはいいなと思ったら、光るペンとクーラーボックスと何か3点セットで1100円みたいなのをあらゆる会社とかお店を回って売る仕事やったんですね、完全出来高制の。

──その時期、そういう怪しい業者がよく物売りに来ましたよ、まったく役に立たないグッズばかり持ってきて。

上田 そうそう。それを1ヶ月ぐらいやったんですよ。いま思えば変な空気のところでしたね。最初にミーティングがあるんですけど、ネガティブな言葉を一切言ったらいかんっていうところだったんです。「暑いですね」って言ったら、「ちょっと上田くん、いまなんて言った?」「暑いですねって言いました」「暑いっていうのはポジティブかな、ネガティブかな?」と。

──ダハハハハ! 「暑い」はポジティブでもネガティブでもないですよ!

上田 「言い方を変えてみようか。たとえば『暑い』だったら『今日は気持ちいい気候だな』みたいな言い方があるよね」とか。

──「気温が高くてテンション上がりますね」とか、前向きに(笑)。

上田 「そうですね、なるほど!」って言って(笑)。ノルマを達成したらみんなで円になって、僕がその円を「慎一郎、慎一郎、慎一郎」って言ってタッチして回るとか。

──なんですか、それ(笑)。

上田 そうやって一定の結果を出し続けたら配下みたいなのができて、その配下の売上が自分に入ってくる。それでいつかオーナーになって不労所得を得られる、みたいな。

──ネズミ講みたいなことをやってたっていうのがそれなんですか?

上田 それとはまた別です。それは1ヶ月ぐらいでしんどくて辞めて、次がネットワークビジネスですね。次世代のmixiになり得るコミュニティサイトに投資したら自動的にお金が入ってくるようになるってヤツで。それもmixi経由で「あなたの日記をいつも読んでます、熱い人ですね。いい仕事があるんです、1回会いませんか?」って言ってきて。それがけっこうかわいい子で、「映画監督を目指しているんだったら安定した収入があって、自分でお金を貯めて映画を作るのもありじゃない?」みたいな。

──「東京ではそんなシステムがあるのか! すごい!」と呑気に喜んでたみたいですね(笑)。

上田 そうです(笑)。で、説明会に行ったら、そこに50万円投資したら自動的にお金が入るようになる、と。で、「50万円もないです」って言ったら、「グッドウィルっていうところに登録だけしてもらうとアコムっていうところでお金が借りられるようになるから」って言われて。

──そんな親切かつエゲツないアドバイスまで(笑)。

上田 そうなんですよ。で、その通りやって。ちょっとあくどいなと思うのが、説明会を受けた夜、その女の子に「今日は一緒にいたい」って言われたんですよ。

──うわーっ、エグすぎる!

上田 つまり、説明会が終わったあとに離れたら僕が友達とか親族に電話するじゃないですか。

──そしたら「それ、おかしいよ」って言われますよね。

上田 止められるじゃないですか。それを阻止するためにひと晩を共にするんですよ。それもネット喫茶でバラバラの部屋でしたけどね。

──ひどいなー(笑)。

上田 ドキドキしたんですけど、ホテルかと思ったらネット喫茶で、眠たくなるまでずっとしゃべったあと、それぞれの部屋で寝て、次の日に契約するっていう。

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