でも今回の件が、すべての分散型取引所にとって終わりを意味するわけでもなさそうだ。SECの文書によれば、コバーンはイーサデルタの運営に特に深く関わっていた。またコバーンは「イーサデルタのスマートコントラクトを改変する能力を持つ唯一の人物」であることから、SECは彼を完全かつ唯一無二の支配力を持つと解釈した。だがそうした状況はあまり出てこないだろうし、他のDEXに比べてイーサデルタ内部の運営は「分散化」されていなかったのかも知れないと言える(イーサデルタは現在、非米国人の複数のオーナーの下で運営が続いている)。
だが、今回のニュースはSECの厳しい監視の目を逃れたいと考える他のDEXにとって、幸先のいい話とも言いがたい。ブロックチェーン業界に詳しい弁護士のキャサリン・ウーはコバーンに対するSECの文書を精査した後で、他のDEXの今後に対する見通しは「超ポジティブではない」とツイートした。また、ブロックチェーン・ドット・コムの社長兼最高法務責任者であるマルコ・サントリは、今回の件は多くの他のDEXにとっても他人事ではないとの考えをツイートした。「商業DEXが証券会社や証券取引所の規制の枠外にあるとは思えない」
ではそのことはどのくらい深刻な問題なのだろう。実はそれも判断に困るところだ。
SECがコバーンに課した罰金が多いか少ないかについては意見が分かれる。判断しづらい理由の1つは、罰金の対象となった違反行為のレベルが正確に分かっていないことだ。
SECがコバーンに罰金の支払いを命じた文書には、昨年の報告書の公表以降、イーサデルタで330万件の取引が行われたと書かれている。その少なくとも1部が証券に該当するとSECが考えるトークンの取引だったのは明らかだ。そうでなければコバーンに罰金が課されるはずがない。だが12ページにわたる文書では、具体的にどの取引が、どのトークンが該当するのかについては触れられていない。だから30万ドルの罰金が、たった1件の取引に対するものなのか、数千件いや数百万件の取引に対するものなのか分からないのだ。
五里霧中に感じられるかも知れないが、明るい材料もある。SECは少なくともICO(新興企業が資金調達のためにトークンを発行すること)について「平易な英語」での手引きを近いうちに公開するとしているのだ。だが今回の一件は氷山の一角に過ぎなくなるかも知れない。SECは「分散化」は証券関連法規を回避するための錦の御旗にはなり得ないと考えているようだし、SECが証券だと考えているのがどのトークンなのか誰にも分からない以上、DEXの運営に携わる者にとっては神経をすり減らす日々が続く。
(記事提供:LONGHASH)
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