米証券取引委員会(SEC)は11月8日、未登録取引所の運営を行ったとして分散型取引所(DEX)イーサデルタの創業者ザカリー・コバーンを提訴していた問題で、和解が成立したと発表した。コバーンは不正に得た利益(30万ドル)とその利息に相当する金(1万3000ドル)および罰金(7万5000ドル)を支払うことで同意したが、違法行為については認めていない。

一見、単純な事件に思えるかも知れないが、イーサデルタがDEXだという事実が話を複雑にしている。DEXは昔ながらの証券取引所と言うよりは1つのソフトウエアだ。イーサリアム・ネットワーク上で走る「スマートコントラクト」で買い手と売り手を直接つなぐため、注文をさばく仲介役はおらず、手数料を取られることもない。当然ながらSECはソフトウエアに罰金を課すことはできない。だからその代わりにイーサデルタの創業者でソフトウエアの大半を書いたコバーンを罰金の対象にしたのだ。

SECの見方からすれば、イーサデルタが技術的にDEXだという事実は大した問題ではない。SECの報道発表資料によれば、イーサデルタはSECが昨年、トークンは証券に該当するとの報告書を公表した後も証券として分類されるタイプのトークンの取引を支援していた。イーサデルタは証券取引所としてSECに登録されておらず、例外の申請も行われていなかったから、これは証券の違法取引を意味する。

コバーンに罰金を命じるSECの公式文書からは、分散化されていようがいまいがSECがイーサデルタを証券取引所と解釈したことは明らかだ。文書には「複数の売り手と買い手からの、証券(トークン)を含むトークンの注文をまとめる取引の場としてイーサデルタは機能していた」と書かれている。またコバーンの違反については「イーサデルタを創設し、そのスマートコントラクトを書いてイーサリアム・ブロックチェーンに展開し、イーサデルタの運営に完全かつ唯一の采配を振るっていた」ために有罪だとした。

イーサデルタのようなDEXと従来型の取引所とでは機能の仕方が違うと主張するのは難しいだろう。イーサデルタの取引件数は一部の小規模な従来型証券取引所と変わらない。

次ページ
  • 1
  • 2