仮想通貨市場の低迷で、ブロックチェーンのスタートアップにとって、資金調達がむずかしい時期が続いている。今年に入り、ICO(イニシャル・コイン・オファリング、仮想通貨技術を使った資金調達)は減少の一途をたどっている。

ところが、ICOにあたり、資金の使途など事業構想を説明する「ホワイトペーパー」は分厚くなる一方だ。約1600件のブロックチェーン・ホワイトペーパーに目を通した結果、LongHashが発見したトレンドの一部を紹介しよう。

政策文書から事業計画書へ

もともと「ホワイトペーパー(白書)」とは、政府機関が社会や経済の実態を国民に知らせるために作成される文書だった。そこに商業的な意図はなく、一般市民の生活に直接影響を与えるものではなかった。

やがて企業が、ビジネス環境や経営方針を説明する文書に「ホワイトペーパー(白書)」という言葉を使い始めた。そして2008年、初の分散化された仮想通貨「ビットコイン」の発行にあたり、サトシ・ナカモトという謎の人物がホワイトペーパーを発表した。

現在、ホワイトペーパーはブロックチェーン技術を使った資金調達の基礎をなすようになった。この中で各ICOプロジェクトの使用技術や事業構想、チーム、ロードマップが説明される。仮想通貨のホワイトペーパーは、論文的要素は乏しくなり、事業計画書に近くなった。

長くなるホワイトペーパー

ビットコインのホワイトペーパーは、わずか9ページ、全3219ワードのコンパクトなものだった。ところが2014年までに、ICOのホワイトペーパーははるかに長くなった。たとえば、イーサリアムのホワイトペーパーは1万3866ワードだった。

ビットコインのホワイトペーパーは仮想通貨の原型を示したが、イーサリアムのホワイトペーパーはデジタル通貨の歴史を延々語っている。さらにビットコインシステムの長所と短所と、イーサリアムの強みを説明し、Dapps(分散型アプリケーション)の未来も説いている。

2017年にICOを果たしたEOS(イオス)のホワイトペーパーは7530ワードで、イーサリアムのホワイトペーパーよりずっと短かった(それでもビットコインの約2倍)。構成はイーサリアムと似ていて、過去のICOプロジェクトの長所と短所を分析したうえで、EOSが目指すブロックチェーンの基本システム(OS)とインフラ、合意形成メカニズムを説明している。

ただ、全体としてホワイトペーパーは長くなる傾向にある。仮想通貨コミュニティー「ザ・ブロック(The Block)」も、11月初旬に似たような結論に達している。

次ページ
  • 1
  • 2