こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。
私は2013年の夏に「中国のヤバい正体」(大洋図書)というエッセイ漫画を日本で発売して以来、人生がガラリと変わりました。まず、大好きな日本に住んで仕事に出来るようになました。そして、大きかったのは『週刊文春』(文藝春秋社)や『週刊新潮』(新潮社)、『週刊SPA!』(扶桑社)を始め、『SAPIO』(小学館)、毎日新聞、産経新聞、TBSなど日本の大手メディアが「共産党がひた隠しにしてきた中国の内情を漫画で暴いた珍しい中国人」として取り上げられたことです。
しかし、私は同時に「中国共産党独裁政権に楯突く人物」として、国家保安にマークされはじめたようなのです。そのため、取材や出演を受ける際は必ずマスクや狐面など、顔を全面的に隠す対策を余儀なくされています。もし正体が特定されると、日本にいる間に中国の工作員に拉致されるか、帰国時に空港で逮捕されるかもしれないからです。
それでも私は恐れずに、第二弾の『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書、2014年)、『中国人による反中共論』(青林堂、2015年)、『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社、2016年)など、いわゆる反中本を発売し、現在では来日当初より身の危険が高くなっていると感じています。もちろん私がここまで活動できているのも、ひとえに日本の編集やライター、番組のディレクターの方々が「身元」を特定できないように協力して頂いているお陰であると感謝しているのです。
「そんな、大げさな!」と思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、私が様々な日本人と交流させていただいて感じるのは、中国共産党の”監視技術”を甘く見る方が多かったということなのです。
昨今では、顔以外に身体の特徴で特定される技術が溢れています。したがって、顔を隠しても決して、万全ではありません。現在、世界中に商業化して、精度を高めている「生体認証技術」。iPhoneやiPadの「指紋認識」、さらに昨年からiPhoneXの発売より、Apple社は「顔認識」を採用しています。それ以外にも、みずほ銀行などの大手銀行、成田空港の入国管理局が採用している「静脈認証」で身元を確認するシステムもあります。上記以外では、人間の網膜をスキャンして「虹彩認識」、声を分析する「声紋認識」など、頭部と指に集中しています。
もちろん、日本やアメリカのような民主主義国家では生体認証技術を電子決済や端末のプライバシー保護や医療行為、テロと防犯対策、犯罪捜査といったポジティブな活用を進めています。
例えば、GoogleやApple、Microsoftなどの大手のIT会社では、生体認証用に登録された指紋や顔、静脈のデータを、一人一人の国民の身分が特定される「ビッグデータ」を、ユーザーの安全性を高め、迅速に良いサービスを提供するために収集しています。
しかし、その一方で、中華人民共和国のような独裁国家においては、統治者が国民を監視するツールとして使われているのを忘れてはなりません。HUAWEIやZTEなどのIT会社では、ユーザーのデータを集めて中国政府に送ることを義務付けられています。中国政府にとっては、14億人のデータを見放題。これらデータは、すでに生体認証技術のテストに流用されているようです。これは、ある意味21世紀の「生体実験」と言えるでしょう。
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