■中国共産党の新しい監視ツール「歩き方認証」

 そこで今回は、監視社会が当たり前の、中国の新しい「生体監視技術」を紹介します。10月31日の中国経済網によれば、中国の銀河水滴なるIT企業が「水滴神鑑」という「人間の歩き姿認証」という生体認証技術を商用化することを発表しました。この技術は世界初です。

中国経済網
http://finance.sina.com.cn/roll/2018-10-26/doc-ifxeuwws8404043.shtml

私はさっそく「銀河水滴」という会社のホームページを見ました。

銀河水滴の公式サイト
http://www.watrix.ai/2018/10/26/xinpinfabu/

「銀河水滴」の紹介によると、人間はそれぞれ日常的に歩く際には癖がついていると言います。例えば、歩くスピード、歩幅、ガニ股や足の向き角度、猫背か、上半身の傾く角度など、それらを中国国内の街中に設置した監視カメラで記録。国民の歩き姿を日常的に撮影し、そしてAIに分析させて中国政府のビッグデータに登録するようです。

現在、「水滴神鑑」は一時間の動画からマークしている人物を10分間の演算で特定可能だといい、その精度は94%にも上るのだとか。

現在、新疆ウィグル自治区の公安機関は、顔認識だけでウィグル人を監視することが出来ないため、「水滴神鑑」の導入に興味を示しています。さらに、撮影用の監視カメラは「解像度2K」HD画質の1980 × 1024でも対応可能になりました。その結果「水滴神鑑」の技術は瞬く間に中国全土に普及してしまうことも予想されます。銀河水滴のCEOの黄永禎氏は「今後、この技術を中国社会の安定を維持するために貢献したい」と明言しました。今後「銀河水滴」は国有銀行から一億元の融資を受け、研究を進め、中国全土の公安機関に販売する莫大なビジネスになる、とRFAの報道がありました。

アメリカのAP通信の分析では「中国の歩き姿の生体認証技術はすでに世界一になっています」と報道されました。

https://www.rfa.org/mandarin/yataibaodao/renquanfazhi/nu-11062018100430.html/ampRFA?__twitter_impression=true

この「人間の歩き姿認証」は中国の発明ではありません。日本では2013年から実用化されていますが、日本やイギリス、アメリカでは公安が防犯技術として使用するにとどまっています。このような技術が民間企業に使われる国は中国だけです。

幸いにも、私はまだ公の場で「歩き姿」を披露していません。上述のように、顔以外に様々な特徴で国民を監視・特定できるようになれば、さらに気をつけることが増えてきます。今まで露出した情報に例えば、声、身長、体系、耳などがあります。これらはひょっとしたら、将来的に、個人を特定できる素材に使われるのではないかと不安です。

ともすれば、現在の狐面にマスクでメディアに登場する姿は過剰防衛とも捉えられがちですが、実際にご自身に身を置き換えればどれだけ異様な社会か想像できるかと思います。私自身の表情が見えたほうが皆様との心理的距離も近くなり、さらに様々な情報も伝えやすいのに、と残念に思うこともしばしばあります。理想としては、個人の顔を出せるような国に中国が変化してくれることですが、現状として難しいでしょう。

『1984』というソ連を風刺した、”完全監視国家”をテーマにする映画に、以下のようなセリフがありました。

「Big Brother in Watching You」

中国国民の間では、自虐流行語になっています。中国のIT企業が何か新しい生体認証や監視カメラ技術を発表するたびに、毎度、不安だらけです。このままの状態が続けば、国民の不満の声も挙がると思います。国民の圧に耐えきれなくなった時、中国もソ連のように崩壊するかもしれません。

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