今年の春ころ、金融庁が仮想通貨交換業等に関する研究会の報告書に沿った法案を国会に提出することが見込まれている。この法案によって仮想通貨が金融商品に近い性格を持つことになると言われる中、既存の金融機関の仮想通貨業界参入は進むのだろうか?

28日に都内で開かれた「第20回 日本国際金融システムフォーラム2019」で、日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)の奥山泰全会長とアンダーソン・毛利・友常法律事務所のパートナー河合健氏が、既存の金融業者による兼業が増えるかを巡ってそれぞれ見解を示した。

金融業者による兼業
かなりの部分で金融商品に近い世界に入る——今国会に提出される見込みの法案についてこのように評価したのは弁護士の河合氏。法案の柱として次のような点を指摘した。

・現物取引の場合、現在取引所は金銭を預かる際、銀行預金で分別管理をしているが、管理信託でリスクを負う必要性が謳われる
・一定の公正取引—相場操縦であるとか風説の流布などは規制する
・インサイダー取引は、何が重要事実であるかが分かりにくいため見送り
・カストディや業者についてもハッキングリスクがあることは同じなので、仮想通貨交換業が必要になる
・デリバティブ取引は金商法の中での規制が正しいという方向性。通貨関連デリバティブの中に仮想通貨関連デリバティブのような特別な条項を入れるかどうか
・ICOに関しては「証券性のあるもの」と「証券性のないもの」と2つに分ける

「証券性のあるもの」に関しては金商法で規制。金商法の枠内で、まさに証券の一類型として扱っていくことになる
・「証券性のないもの」これまで通り仮想通貨としての扱いで規制していく

河合氏は「かなりの部分が金融商品に近い世界に入ることになる」と解説。これまで金商法と向き合って来た方々とっては理解しやすい世界になって来ており、基本的に参入しやすい環境が整って来ていると述べた。その上で河合氏は「ある程度、兼業承認も降りるのではないか」と予想した。

実際、河合氏の法律事務所には、金融機関、総合商社、不動産などから問い合わせがきており、既存のプレイヤーによる参入意欲は高いという。例えば、現在、先物取引の世界と現物取引の世界はアービトラージ(裁定取引)が効かないようになっているが、そこに対してスワップなどといったオプションも取り扱えるようになる。一部の金融業者からはそういったことを睨んだ相談も来ているそうだ。

五里霧中

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