デノミネーションが繰り返される一方でヤミの為替レートに関する法律が撤廃されたことで、国民は以前よりもおおっぴらに法定通貨を外貨に、特に米ドルに両替している。それでも政府が合法的に取引される外国為替を規制しているせいで、いまだにドルを手に入れるのは困難だ。おかげでビットコインなどの仮想通貨を使ってみようという人も増え、ローカルビットコインズ・ドットコムという相対取引のプラットフォームが人気を集めている。ローカルビットコインズにおける取引高でベネズエラはロシアに次ぐ2位で、トラフィックでは最多だ。

国際社会からの経済制裁もあって、ベネズエラ政府は仮想通貨ブームに乗ろうとしている。政府は先ごろ、新しい両替および送金の制度を導入。仮想通貨は高い料金を課され、不利なレートでの取引を強いられることになった。

政府はまた、自前の仮想通貨「ペトロ」の普及を図っており、年金受給者にペトロでの受取を強いたりしている。政府は複数の仮想通貨取引所の立ち上げを認可したが、公的な規制はまだできていない。

数年前と違って仮想通貨はもはや「地下の」ものではなくなったが、幅広い普及や受容にはまだ壁がある。仮想通貨を一種の詐欺のように考えている人は多いし、使おうにもインターネットを使える環境にない人も多い。ベネズエラのネット環境は悪化し続けている。政府が通信の許認可権を握っているためだ。

政府が旗振り役をしているのだから、ベネズエラ人は比較的、仮想通貨のことを分かっていると思うかも知れない。だがたとえそうであれ、仮想通貨の知識もそれに対する信頼もほとんどない。たしかに仮想通貨での支払いを受け付けると言っている小売店はたくさんあるが、経営者がその場にいなければ仮想通貨を扱いたがらないのが実情だ。

ベネズエラにおける仮想通貨のマイニングもメディアの関心を集めてきたが、マイニングに対する規制が厳しいことには留意すべきだ。もし民間企業がマイニング機材を輸入しようとすれば、元が取れないほどの高い関税を払わされる。合法的にマイニングがやりたければ、複雑怪奇な官僚機構と渡り合わなければならない。マイニング機材をおおっぴらに販売している会社もあるが、明らかに政府と直接のつながりがあるところばかりだ。それでも、警察はチャンスがあらばマイニング機材の押収を行うことがある。被害者は報復を恐れ、泣き寝入りを強いられることも多い。

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