デフィカルティ(難易度)調整は、それまでのハッシュレート推移の影響により、かなり高い水準で設定されており、これら2日と比較しても、マイナー撤退ラインの危惧や、それに伴うハッシュレートの下落、およびBTC価格への売り圧力を示唆している。

オプション取引とは
オプション取引とは、「将来の売買を約束する権利」のことで、あらかじめ決めた行使価格で商品を買う権利をコールオプションと呼ぶ。将来の価格上昇を見越して、現在価格で購入できる権利を先に買っておくものだ。売買時の市場価格が行使価格を下回った場合、権利を放棄することができる。

アメリカン型とヨーロピアン型には、以下のような違いがある。

アメリカン型コールオプション
オプションの満期前、いつでも権利行使ができる
ヨーロピアン型コールオプション
オプションの満期日のみ、権利行使ができる
(その代わり、アメリカン型よりも割安)

なお、日本では、日経225オプションではヨーロピアン・タイプを採用、先物オプションではアメリカン・タイプを採用している。

マイナーの投資インセンティブとの関係性
ASICマシンへの投資から得られるキャッシュフローの現在価値は、

• 参入時点の仮想通貨価格
• 仮想通貨価格のインプライドボラティリティ
• 無リスク金利
• マイニング報酬
• ハッシュパワーのシェアおよびその推移
• 電気代から算出されたパラメータ

を用いて算出可能だとし、コールオプションの現在価値とほぼ同様の性質を持つとしている。

レポートでは、このオプション取引の性質を元に、PoW型のブロックチェーンにおいて「セキュリティの維持、および運営方針の決定に関して、極めて重要な役割を持つ」と言及。マイナーの長期的な投資インセンティブの関係性について、以下のように導き出した。

「コールオプション」の価格は、長期的なトレンドに対して反応しないことから、ASICの価値も仮想通貨価格の長期的なトレンドには依存しない。

一方で、コールオプションは、原資産価格が下落したときに、その損失を被らなくてよいという点で、原資産を直接保持するよりも有利な金融資産なので、原資産のボラティリティが高いと、コールオプションの価値は増す。

ゆえに、すでにマイニングASIC機材を保有しているマイナーたちは、仮想通貨価格のボラティリティが高いほうがより高い利益を得ることができる。

PoWはマイナーの合意によって仕様変更が行われるか否かが決まるため、ASICに多額の資金を投じるマイナーには、事実上、強力な議決権を有していることと同義だとした。

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