2018年以降、ビットコイン価格は大規模ハッキングや、大手を含めた仮想通貨交換所の相次ぐ行政処分に伴う信用失墜などを背景に低迷が続いていたが、2019年春に息を吹き返した。5月以降、この流れは強まり、5月27日までの月間値幅は38万円(高値97万円、安値59万円)、一日に4万円以上の値幅が出たのは15日、1日に10%以上、乱高下したのは7日もある。変動率(ボラティリティ)を好む投資家が一部回帰したことから、ビットコイン価格は、2018年5月以来となる100万円の大台回復が間近となっている。

2019年1月から3月辺りまでは、規制強化等(レバレッジ倍率は、自主規制法人である一般社団法人日本仮想通貨交換業協会が定める「証拠金取引に関する規則及びガイドライン」にて4倍まで引き下げる)を背景に積極的なレバレッジ取引(証拠金)を行う投資家が大幅に減少したことから、出来高は2017年比では減少していたが、足元、一日の値幅が大きくなるにつれて出来高は復調している。

投資家からすると、やはり株式、為替とは比較にならない値動きの軽さが魅力なのだろう。上記の通り5月に入り10%以上の値動きが5日もある金融商品はほとんど存在しない。株式市場で例えるのであれば、毎日、新規上場(IPO)が行われているようなものだ。

一部で上場企業の2020年3月期の純利益は28兆4500億円程度と前期比で1.4%減と2期連続での最終減益となる見通しと伝わるなど、国内株への期待感はさほど高くない。米中貿易摩擦の解消が見えない限りは、国内株とくに東証一部上場の大型株への積極的な投資は考えにくいだろう。大型株への投資意欲が低下したことも、ビットコイン市場に資金が多少流入する要因と考える。

もっともボラティリティが高いということは、それだけハイリスク・ハイリターンである。足元、こうしたハイリスクを許容できる投資家がアグレッシブに動いているのだろう。

正直、ビットコインの価格がこの4月以降、一気に値を飛ばし始めた背景は明確にわかっていない。ビットコインを筆頭に暗号資産(仮想通貨)は、ファンダメンタルズよりもテクニカルもしくは需給面の影響が大きい市場であることから、大口の買い戻しなどが反発のきっかけだったと考えるが、高いボラティリティに魅せられたかつての投資家が、足元の値動きを見て一部戻ってきたのだろう。

一方、チャート形状を確認すると、2018年11月から2019年3月にかけて、ソーサーボトムを形成していたと見ることができる。ソーサ—ボトムはフォーメンション分析の一つで、受け皿(ソーサー)のような形状なので、「鍋底」もしくは「ラウンドボトム」とも呼ばれる。

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