全国各地に美しい旧市街を残すドイツ。そのなかでも、ひときわ重厚感あふれる旧市街を有するのが、東ドイツの古都ドレスデンです。

現在はザクセン州の州都であるドレスデンは、かつてザクセン王国の都として繁栄。芸術を愛したアウグスト強王らの手によって、華麗なるバロック建築群が建てられ、「百塔の都」「エルベ川のフィレンツェ」と呼ばれるほどの繁栄を謳歌しました。

第二次世界大戦下、ドレスデンに悲劇が訪れます。1945年2月のドレスデン爆撃により、街の85%が破壊され、ドイツ屈指の美しい旧市街もがれきの山と化しました。戦後、ドレスデンの旧市街は段階的に復興を遂げ、「ドイツ・バロックの真珠」とうたわれた街並みは、再び輝きを取り戻しています。

戦後半世紀を経て、「和解の象徴」として生まれ変わったのが、ノイマルクト広場に建つフラウエン教会。

1743年に完成したドイツ最大のプロテスタント教会でしたが、ドレスデン爆撃で廃墟に。旧東ドイツでは、教会の再建は重視されなかったため、長らくがれきのまま放置されていましたが、1994年にようやく再建作業が始まり、戦後半世紀以上を経た2005年に完了しました。

直径25mの大ドームをもつ優美な姿は、ノイマルクト広場のシンボル。「フラウエン(聖母)」の名の通り、力強くも女性的で繊細な外観はもちろん、柔らかな色合いの天井画やパイプオルガンに彩られた内部も見逃せません。ドーム上の展望台からは、ドレスデン市街のパノラマが楽しめます。

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