近年、少人数の葬儀が主流になりつつある。そうしたニーズに応えて、仏事関連総合サービスの株式会社メモリアルアートの大野屋(以下、大野屋)は2005年より「リビング葬」のサービスを開始。10月29日にはメディア向けの体験会を実施した。

体験会の会場となったのは、東京都小平市の「フューネラルリビング小平」。大野屋が運営する家族葬専用の斎場である(家族葬とは、遺族やごく親しい知人のみで行なう小規模な葬儀のこと)。

リビング葬は大野屋が商標登録しているオリジナル葬儀プランであり、フューネラルリビング小平と「フューネラルリビング横浜」で行なわれている。

リビング葬とは、文字通り自宅のリビングのようにくつろげる空間において、家族や親しい知人などの少人数で故人との別れの時間を過ごす葬儀のことである。

今回のメディア向け体験会では、大野屋の担当者よりリビング葬のニーズが高まっている背景についても解説された。

コロナ禍が後押しして今や少人数の葬儀が主流となった

従来の葬儀は50~100名、多ければ数百名が参列する、「一般葬」と呼ばれるタイプのものが多かった。だが、高齢化によって「故人の関係者もすでに亡くなっている」「喪主が仕事をリタイアしているため、喪主関係の参列者が少ない」などの理由で小規模な葬儀が増えていた。

また、近年、葬儀に対する価値観も変化しているという。「残される子供たちに負担をかけたくない」「古い慣習にはとらわれない」「近所付き合いが少ない」「費用の余裕がない」といった事情により、家族中心の小規模な葬儀が増えている。

こうした事情をコロナ禍がさらに後押しして、参列者を最低限に絞った葬儀が増えているのだ。大野屋が取り扱う葬儀も、2010年は一般葬64%:家族葬36%という割合だったが、2020年には一般葬21.3%:家族葬78.7%と、家族葬が多数派になっている。

自宅のようにくつろげる空間

こうした大きなニーズに応えるのが、大野屋のリビング葬だ。リビング葬を行なうフューネラルリビング小平には、リビング葬専用斎場ならではの特色がある。

斎場には靴を脱いで入る。中にはソファーなども置かれていて、まさに自宅のリビングのようにくつろげる空間になっている。そのリビングに棺と祭壇が設置される。

食事をとるためのダイニングとリビングの間に仕切りがないため、食事をしながら故人について語り合っている間も故人と同じ空間で過ごせる。

通夜で一晩過ごすためのバスルームや洗面台もあり、夜間の付き添いも可能。休んだり、控室としても使える和室も用意されている。

棺が正面から見て縦向きに置かれる点もポイントだ。横向きに置くと一方からしか故人の顔を見ることができないが、縦向きだと左右のどちらからも故人の顔を見られる(※宗教者の意向で横向きに置かれるケースもある)。

参列者への対応などで慌ただしく追われることがない

リビング葬ならではのメリットのひとつとして、故人との別れに専念できるというものがある。参列者が多い一般葬では、喪主や遺族が参列者への対応などに追われて、葬儀が終わってみると「別れの時間が十分にとれなかった」ということも多い。

だが、リビング葬では参列者は遺族と親しい知人と少人数であり、スタッフもサポートするため、ゆっくりと過ごすことができる。リビングにはテレビも置かれているので、故人の映像を見ながら語り合ったり、用意された用紙を使って個人宛への手紙を書くこともできる。

提供される料理も、「葬儀で召し上がった料理は、後々まで強く印象に残るものですから」(大野屋スタッフ)とのことで、こだわりのメニューが提供される。コースによっては、シェフがその場で調理を行なう。

なお、今回の体験会で設置されていた祭壇は無宗教のものだったが、葬儀は仏式などに対応できる。祭壇の花などの飾りは希望に合わせられる他、空間全体を使った演出も可能。故人や遺族の様々な希望に応えて、自分たちの葬儀を作り上げることが可能なのだ。