物価上昇が続き、多くの国民の家計に影響が出る中、従業員の生活費を補助する目的で「インフレ手当」を支給する企業が増加している。

帝国データバンクが11月に発表した調査によると、「支給した」企業は全体の6.6%、「支給予定」は5.7%、「検討中」は14.1%となり、全体の4社に1社(26.4%)が支給に前向きなことが明らかになった。

また、企業の間では食費を補助することで従業員の暮らしをサポートしようとする動きも広がっている。食事面から従業員をサポートする「チケットレストラン タッチ」(以下、チケットレストラン)への問い合わせが、昨年9月以降、約2倍に急増しているというのだ。

チケットレストランは、株式会社エデンレッドジャパンが手掛ける電子カードタイプの食事補助サービス。全国7万店舗以上の飲食店やコンビニで利用可能で、レジに置かれた端末機にカードをかざすと料金のキャッシュレス決済ができる。

その際の、食事・菓子・飲み物の料金の半額分を企業が補助する形となるのだ(従業員の負担分は給与から天引きされる)。

チケットレストランについて問い合わせをした企業のうち、77%は社員数100人以下の中小企業。中小企業の多くが、従業員のサポートに課題を感じていることがうかがえる。

チケットレストランを導入した、とある運送会社は、業績が思わしくないため基本給を上げることは難しいが、離職率を抑えるためにチケットレストランを導入したという。

また、とある医療法人は、夜勤も多く不規則な食生活になりがちな職員の健康増進も兼ねてチケットレスランを導入した。

「インフレ手当」として従業員に現金支給した場合は、税負担が増加するだけでなく、「使用用途が明確にならない」という課題が生じる。生活支援のために現金を支給しても従業員が何に使用したのか、企業は把握できないのだ。

その点、チケットレストランであれば、使用用途は食事に限定される。しかも、従業員は手取りが増え、企業は支払いコストが減らせるという税制上のメリットもある。

企業にとっては税負担が少ないため、業績の変動に関わらず従業員への支援を続けやすい。そういった点もチケットレストランが注目を集めている要因だろう。コロナ禍が続き、円安・物価高にも家計が大きな影響を受ける中、チケットレストランは人々の生活を助ける存在になるかもしれない。