【2023年1月17日 ニューヨーク発】

ユニセフ(国連児童基金)は本日発表した新しい調査報告書の中で、最貧困層の子どもたちが国の公的教育資金から受ける恩恵が最も少ないと指摘し、世界の何百万人もの子どもたちを学習の危機から救うために、さらなる、そしてより公平な投資を呼び掛けています。

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調査報告書「Transforming Education with Equitable Financing(公平な資金配分による教育変革)」では、調査対象各国で世帯が保有する資産によって学習者を5つのグループに分けたとき、最も裕福なグループの学習者が世界平均で28%の公的教育資金を受けているのに対し、最も貧しいグループは平均して16%しか得ていないと指摘しています。低所得国では、最貧困層の学習者には公的教育資金の11%しか支給されない一方で最富裕層には42%支給されており、その差はさらに顕著です。

ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは、「私たちは子どもたちの期待を裏切っています。世界のあまりにも多くの教育制度が、教育に最も投資を必要としている子どもたちに最低限しか投資していません。最貧困層の子どもたちの教育に投資することは、子どもたち、地域社会、そして国の未来を確かなものにするための最も費用対効果の高い方法なのです。真の進歩とは、あらゆる場所で、すべての子どもに投資したときにのみ、もたらされるのです」と述べています。

報告書は、102カ国の就学前教育、初等教育、中等教育、高等教育の範囲をカバーした政府支出のデータを調査したものです。その結果、最も貧しいグループの学習者への公的教育資金の配分を1ポイント増やすことで、3,500万人の初等教育年齢の子どもが学習の貧困(learning poverty)から抜け出せることが明らかになりました。調査結果はまた、世界中の低所得国と中所得国の双方において、公的教育支出はより裕福な家庭の学習者に行き渡ることの方が多いと指摘しています。

この格差は、低所得国の間で最も顕著に見られます。いくつかの国では、最富裕層世帯の学習者は、最貧困層の6倍以上の公的教育資金の恩恵を受けていることがデータで示されました。一方、中所得国、例えばコートジボワールやセネガルなどでは、最富裕層の学習者は最貧困層の約4倍の公的教育支出を受けています。高所得国では概して格差は小さく、最富裕層は通常、最貧困層の1.1倍から1.6倍の公的教育支出の恩恵を受けていますが、フランスとウルグアイは格差が大きい方に入ります。

調査報告書は、貧困にあえぐ子どもたちは学校に通える可能性が低く、通えても早くに退学することが多いと示しています。さらに、一人当たりの公的教育支出がより多く必要になる高等教育において、貧困家庭の子どもたちの占める割合は低いと指摘しています。彼らは多くの場合、サービスが行き届いていない遠隔地や農村部に住んでおり、デジタル・ディバイド(情報格差)の不利益を被っている可能性が高いのです。

新型コロナウイルス感染症の世界的な流行以前から、世界中の教育制度は子どもたちの期待を大きく裏切っており、学校に通っていながら、基本的な読解力や計算力を身に付けていない子どもが何億人もいるのが現状です。最近の推計によると、全世界の10歳児の3分の2は簡単な物語を読んで理解することができません。

調査報告書によると、学習の危機に対処するための重要な一歩は、政府が資金を公平に分配し、基礎学習により一層焦点を当てることを含み、公的教育リソースに優先順位を付けることです。これには、すべての子どもを対象とした就学前教育と初等教育のための公的資金を確保し、またより高レベルの教育では貧困層や社会的に疎外された人々に照準を合わせることが必要です。

調査報告書ではさらに、以下のようなことが明らかになりました。

・過去10年間で、データを有する国々の6割において、公的教育支出の公平性が高まった。
・しかし、3分の1近くの国が、最貧困層へは公的教育資金の15%未満しか支出していない。低所得国グループでは、この割合が8割と際立って高い。
・1割の国々で、最富裕層世帯の学習者が最貧困層世帯の学習者の4倍以上の公的教育支出を受けている。
・紛争や災害などの緊急支援における教育分野への資金要請は、必要な額のわずか10~30%しか集まらないことが多く、しかも国や地域によって大きな格差がある。

すべての学習者に教育リソースが行き渡るようにするためには、早急な行動が必要です。この調査報告書は4つの重要な提言を掲げています。それは、教育への公平な公的資金の投入、基礎学習を優先した公的資金の配分、開発援助と人道支援の状況に応じた公平な教育支援の配分のモニタリングと確保、そして革新的な方法で教育を提供することへの投資です。