7月9日、アイ・グリッド・ソリューションズ本社でサービス「循環型電力」の発表会が開催された。「循環型電力」とは、屋根がなくても導入できる仕組みの太陽光発電の再エネであり、かつ、課題となる自然破壊をせずに実施できるサービスだという。

そのサービスを取り扱うアイ・グリッド・ソリューションズとはどんな企業か、そもそもなぜ太陽光発電を広める必要があるのか、それらを秋田社長が説明した。

◯アイ・グリッド・ソリューションズとはどんな会社なのか

アイ・グリッド・ソリューションズは「グリーンエネルギーの巡る社会の実現」を目指す企業である。これまでも太陽光発電システムを敷地や屋根に設置し、そこで発電した電力を電力需要家に提供する事業を手掛けてきた。

今までは設備投資の初期コストや維持管理などメンテナンスなどのランニングコストが発生するものだったが、アイ・グリッド・ソリューションズはそれらを自ら負担する形のビジネスモデルで運営している。現状は1200施設を超えて保持しているという。

◯再エネは2040年には今の2倍に規模を拡大する必要がある

気候変動によって日本の気温上昇は問題視されるレベルだ。しかし、電気問題は今のままでは枯渇しており、省エネを余儀なくされる状況にある。それ自体は重要としながらも、解決するのがCO2を排出する化石燃料からクリーンな再生可能エネルギーへの転換なのである。

第7次エネルギー基本計画は、再エネは今の2倍にしなければいけない、とされている。そこで太陽光発電が鍵になるのだ。

◯再エネの問題点について

ただ、太陽光発電は日中しか発電できず、夜間は発電できない。そして、電気は電力の需要とバランスを取る必要がある「同時同量の原則」で運営する必要がある。

発電して作られる電力は需要と合わせる必要があり、需要を超える電力を作らないように制限して絞らなければならない。これを無視すると、周波数が乱れて、電力の安定供給が不可能になってしまうのだ。

今までは火力発電だったのでコントロールは容易だった。風力や太陽光はコントロールすることができない。これは課題である。

現状、電力の発電量が需要を超える時間帯が存在している。その捨てられる省エネは2040年には総量として約131億kwhになる見通しだ。それを使い切るシステムが求められている。

そもそも、従来のメガソーラーで作れる発電量はさほど大きなものではない。しかも、森林伐採による自然環境への負荷は問題であり、メガソーラーはもう設置する場所もない。そもそも、電力を他の遠いところに送ろうとすると、送電するための開発コストが必要とされてしまう。

それを解決するのが電気を使う場所で発電をするスタイルだった。しかし、コントロールできない太陽光発電で「同時同量の原則」を守るのは難しい。もっと設置できる環境であっても、太陽光発電が設置されないケースが増えている。だが、原子力発電や火力発電に変わる発電をする為には、どんどん設置数を増やしていくしかない。

このジレンマをどう解消すべきなのか。

余剰電力をうまく活用すればいいのだ。送配電網によって他所に電気を送るだけに思えて、2日前に融通する電力を通告する必要がある。「同時同量の原則」を守って、他所に融通する使用電力量を予測するプラットフォームが必要となり、自社で開発した。

余剰電力に関して、省エネがすすめば、余剰電力は今まで存在しなかったところにも発生する。余剰電力が出るから作らなかった発電施設もどんどん設置していく予定。つまり、余剰電力自体は将来的に増えていき約120億kwh出てくる見通しだ。送電電網を設置するコストを支払う価値はある。「循環型電力」であれば、屋根がなくとも余剰電力を受け取れる形になるのだ。

次世代太陽電池が開発されれば、さらに太陽光発電は増えていく将来はあるが、実装されるのは2030年以降と見られており、まだまだ遠い。だが、「循環型電力」はそこまでの架け橋となる存在だと自負しているようだ。

エナジートレーディング部執行役員である那須氏から、「循環型電力」とはなにかの解説もされた。

◯「循環型電力」とはなにか

結局、「循環型電力」とは再エネを地域分散させた上で集約した形で経済的に地域で循環させていくことを目指したサービスである。屋根や駐車場など、全国に既に1200を超える施設を有しており、そのうち約300施設で発生した余剰電力を地域の中、または、企業の中で循環させていく仕組みだ。そうすることで、捨てられる電力を余すことなく使うことになるのである。

金融機関や地銀と連携しながら開発導入を勧めていく形になっており、経済での地域の循環も目指す。

提供されるプランは、太陽光発電がされる時間帯である9時から15時と、その他の時間帯で料金単価が変わるシステムである。発電される時間は20年間単価を固定した形で再エネを供給するという。

従来の似たサービスに、施設の屋根などに発電施設を置くオンサイトPPAと、メガソーラーなど別施設で発電した電気を使用するオフサイトPPAがある。「循環型電力」は施設の制約がなく、屋根の構造や築年数、耐荷重などを気にする必要がなく電力供給を受けることが可能である。

さらに、「循環型電力」は、店舗を閉店することで20年間そこに有り続けることができないケースにも対応。やむを得ない事情であれば解約は無償でできるという。

また、太陽光発電は基本的に発電所を建ててから電気を供給する形なので、1年ほど時間がかかる。「循環型電力」は、すでに発電所は稼働しているので、スピーディーに供給ができるのだ。同じ理由で、オンサイトPPAでは賃貸の場合はオーナーや所有者からNGされる心配があるが、「循環型電力」はその必要もない。

他にも、メガソーラーなどであれば局所で発電している関係上、天候次第で供給が止まることもあるが、全国に分散しているので長期的に安定した供給が可能という強みもある。

そもそも、循環型電力は、昼間の料金が固定で、安定して調達ができるため、電力市場が高騰してもリスクヘッジができるのだという。

◯世界が目指す「脱炭素社会」実現の一歩となるか

2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向けて環境省が動いており、脱炭素社会を目指す活動を企業は求められている。電力なくして経済活動できない時代だからこそ、よりお得に再生可能エネルギーを活用する手段を視野に入れるのは、今後より一層求められていくのだろう。