今回問題となった5社は、各々細やかな処分内容が異なりますが、もっとも問題とされたビットフライヤー社では、「仮想通貨を取引する口座の開設にあたっては、郵送での本人確認手順を踏まずに仮想通貨の取引や海外業者が管理するウォレットなどへの仮想通貨の送達などの機能も解放されていた。そのため、本人確認もできないかなりの数の口座が数十万単位で大量に開設され、二桁億円以上の仮想通貨がマネーロンダリングの一環として海外に払い出された怖れがある」(当局筋)とされ、強く懸念されてきました。

5月14日、毎日新聞が報じた「仮想通貨を利用した指定暴力団によるマネーロンダリング」においては、この本人確認が機能しないどころか実質的に行われていなかったビットフライヤー社など仮想通貨交換業者による架空口座の手による資金洗浄が行われていたことは確実視されていました。ビットフライヤー社に問い合わせをかけたところ「当社でマネーロンダリングに使われた口座があることは認識しておりません」(ビットフライヤー社CFO 金光碧氏)と回答していますが、ビットフライヤー社の関係者によると「そもそもKYC(本人確認手順)が行われておらず、システム側で開設された口座のどれが問題なのか、付き合わせようにも大量に口座がありすぎて分からない。本人確認できていない口座の総数は分かっても、それがどういう取引に使われたのか、まだ調べている段階」と回答しています(18年6月6日時点)。

また、ビットフライヤー社と同時に業務改善命令の出た別の業者は取材に対し「本人確認が完了していない400の口座から、少なくとも15億円相当の仮想通貨がルーマニアやフィリピン、イギリス・マン島の仮想通貨業者の管理するウォレットに不正に流出した可能性は否定できない」と説明しています。

実際、ビットフライヤー社がマネーロンダリングの疑いに晒され始めてから一年以上経過した18年4月12日、日本経済新聞の報道に押される形でようやく本人確認の徹底と未確認口座の機能制限を発表するに至ります。時すでに遅し、としか言いようがありません。

なぜKYC行き届かず、本人確認できない口座に対し仮想通貨取引や第三国への仮想通貨送付の機能が実装されていたのでしょう。その理由は「仮想通貨取引の口座数が多ければ多いほど、その業界で大手という信頼が得られ、顧客獲得の戦略上有利になることは間違いないから」と仮想通貨業界の関係者は説明しています。事実、ビットフライヤー社はその広告において「ビットコイン取引量・ユーザー数・資本金 No.1」と明記。これらのユーザー数やビットコインなど仮想通貨取引でかなりの反社会的勢力によるマネーロンダリングの資金が取り扱われていた可能性が否定できません。

消費者行政に詳しい弁護士はこれらの仮想通貨交換業者に対し「マネーロンダリングに使われる可能性を分かっていて本人確認の強度を弱めて口座開設者をかき集めていたことになり、悪質としか言えない」とし、本件は経過措置であって、業務内容に抜本的な改善が行われない限り、営業停止処分の可能性も捨てきれないとしています。

次ページ:ビットフライヤーで顧客が一方的に損害を被るケースが続出?