■劉霞氏釈放の当日に民主活動家を有罪に、「人質」という新しい切り札

あまり注目を浴びていないニュースですが、劉霞氏が釈放された当日に、湖北省武漢市の民主派活動家の秦永敏氏(65)に13年の有期懲役が下りました。秦氏の罪はネット上に「中国の民主化を平和的な手段で行う」というテーマの文章を発表しただけです。中国政府の思惑は、劉霞氏の代わりに秦氏に注目を向けるために、わざと13年の刑にしたと考えられます。これが民主国家なら、秦氏は無罪です。この件について、中国のネット民は「中国政府は劉霞氏を釈放したのに、秦氏に判決を下すのは、明らかに司法制度の基準が曖昧である」と、共産党の人治の矛盾を指摘しました。

https://www.rfa.org/mandarin/yataibaodao/renquanfazhi/yf1-07112018101926.html

中国共産党は劉霞氏の「釈放」という切り札を出した後に、すぐに「人質」という新たな切り札を作るというスタンスを取ったのでしょう。中国人の政治犯をいわば「人質」にして、欧米の民主国家と、経済と政治の「駆け引き」とも取れる、一種の独特な取り引きを行うのは、中国共産党の十八番です。

今回の件を劉霞氏の「釈放」だけに焦点を当てて報道すると、「中国政府は人権に寛容になった」と捉えられてしまいます。日本のマスメディアは中国への忖度か、詳細や深い事情を報道することはほとんどありません。ニュースの表層だけでなく、常に裏にある事情を追及して周知しなければ、結局、中国政府のプロパガンダに加担してしまうことになるのです。