むせ返るような濃い緑が溢れる小川の中、口を半開きにし、水に流されながらかすかに歌を口ずさむオフィーリア。その顔に生気はなく、魂さえ抜けているかのように見えると同時に、すべての苦しみから解放され、安堵しているかのようにも見えます。
手の周りに浮かんでいるのは、象徴的な花。ポピーは死を意味し、デイジーは無邪気、パンジーは思考を意味します。水際には青く小さな花をつけた忘れな草が描かれています。

縦約76センチ、横約112センチのこの絵の中に描かれている象徴は植物だけではありません。茂みの中に死を象徴するドクロが描かれています。

この絵のモデルを務めたのが、ラファエル前派のミューズとして当時画家たちの間で引っ張りだこであったエリザベス・シダルという女性です。

ミレイはオフィーリアが水に浮かんでいる様子を描くため、服を着たままのシダルを金属製のバスタブに入れました。バスタブの下にランプの火を当てて水を温めながら描いたものの、その火が消え、シダルが寒さに震えるのにも気付かないほど、制作に熱中したのだそう。そのせいでシダルは体調を崩したため、彼女の父親がミレイに治療費を請求したという逸話があるほど、ミレイが心血を注いだこの作品。
緻密な自然の描写、オフィーリアの圧倒的な美しさ。ミレイの魂がこもった必見の作品です。

・ロセッティの傑作「プロセルピナ(Proserpine)」

1874年、展示室1840 

2014年に東京の森アーツセンターギャラリーで開催された「テート美術館の至宝 ラファエル前派展」のポスターに登場し、強烈な印象を与えたのが、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティのプロセルピナです。

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