言わずと知れたシェイクスピアの戯曲「マクベス」。当時のシェイクスピア劇で活躍した人気女優、エレン・テリー(Ellen Terry)が演ずるマクベス夫人に衝撃を受けた画家、ジョン・シンガー・サージェントが、絵のモデルになるようエレンに懇願して書き上げた大作です。

勇壮な将軍であるマクベスは、野望溢れる妻に叱咤され、主君を暗殺して王位を奪ったものの、その重圧や亡霊に怯えて錯乱し、ついには貴族や王族らの復讐に倒れます。マクベス夫人も罪悪感から精神に異常をきたして死んでいきます。

縦2メートル21センチ、横1メートル14センチという絵の大きさもさることながら、念願の王冠を頭上にかかげ、権力に取り憑かれて狂気に満ちたマクベス夫人の迫力に圧倒されます。ただ、実際の舞台ではこのポーズはとっておらず、サージェントが考えだしたものだそうです。

・ファッショナブルな「シャロットの女(The Lady of Shalott)」

1888年、展示室1840 

19世紀の詩人、アルフレッド・テニスンによる「シャロット姫」を題材にしたジョン・ウィリアム・ウォーターハウス(John William Waterhouse)の大作。

精緻(せいち)に描かれた自然の中、川に浮かぶボートの上に座る悲壮感たっぷりの女性。どこかミレイのオフィーリアを彷彿とさせますが、説明書きにはやはり「ミレイのオフォーリアに敬意を表したのかもしれない」と記されています。
川の中洲に住むシャロットは「外の世界を直接見たら死ぬ」という呪いにより、鏡に映る外の世界を眺めながら、来る日も来る日もタペストリーを織って暮らしていました。ある日、川のほとりで歌うランスロット卿の歌声に惹かれ、ついに外の世界を覗いてしまいます。その途端に呪いが現実のものとなり、織物の糸に巻きつかれながらやっとの思いで小船に乗ったシャロットは、対岸に辿りつく前に息絶えてしまいます。

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