仮想通貨の分野で最近話題になっているのがステーブルコイン(価格安定型通貨)だ。多くのステーブルコインは米ドルといった法定通貨に連動していて、価格の変動に比較的影響を受けないとされている。しかし、いつもそれが正しいとは限らないことは、最も知られているステープルコインであるテザー(USDT)の最近の大幅下落が示している。以来、USDTを追うように他のステーブルコインが台頭し、高い将来性をうかがわせている。それでも危険が潜んでいないわけではない。

ステーブルコインの問題

ステーブルコインに対する需要は、特に中国のような国では容易に理解できる。中国は昨年、仮想通貨取引所に対して法定通貨との取引を禁止した後、国内の仮想通貨取引所を閉鎖させた。多くの中国人にとって、ステーブルコインは仮想通貨に代わって法定通貨の代替となり得る。

問題は、ステーブルコインは従来の法定通貨の問題点を受け継いでいるだけでなく、新たな問題点も抱えていることだ。以下に、そのいくつかを挙げる。

過剰発行の誘惑

歴史は繰り返されるものだ。中央銀行が通貨を過剰に流通させてしまうような危険は、仮想通貨では予防できるはずだが、ステーブルコインの発行者は自分たちのコインを過剰に発行する誘惑に常にさらされている。ほぼ全くコストをかけず極めて高い利益を上げられる可能性があるのだから。

コインの発行者に対する低い信頼度

中央集権的な組織が発行するステーブルコインには高い信頼性が要求される。これらの組織に存在するリスクは即、コインの保有者にとってのリスクになり得るからだ。さらに、コインの時価総額が上昇するのに伴って信頼度も高まる必要がある。ほとんどの場合、ステーブルコインの信頼度は結局、時価総額に比べて大幅に低くなる。

不安定な仮想担保の時価と公正な価格への信頼の欠如

「イーサリアム・ブロックチェーンに基づく史上初の非中央集権的ステーブルコイン」を自称するDAIを例に取ってみよう。DAIが担保とするのは仮想通貨だが、仮想通貨そのものに高い価格変動率があり、頻繁なマージン・コールや手仕舞いの動きが想定される。非中央集権的なステーブルコインのリスクとしてます挙げられる点だ。しかし、よく考えてみれば、もう一つのリスクがある。スマートコントラクトの手仕舞いの価格はどのような水準であるべきか。このような公正な価格の維持という面で、信頼性が重要な中央集権的な制度と同じような問題に再び直面することになるかもしれない。

実効性のあるAMLソリューションの欠如

次ページ