仮想通貨調査専門会社デルファイ・デジタル(Delphi Digital)は、イーサリアムの現状と今後に関する新たな広範にわたる報告書の中で、仮想通貨「イーサ(ETH)」の長期的な価値をめぐる4つの主な懸念について分析を行った。

同社が列挙している懸念は包括的なものではなく、報告書はイーサリアムの将来の破たんを予測して作成されたものではない。だがイーサリアムの分散型アプリケーションの成功は必ずしもETH所有者にとっての利益につながらないかもしれない、というのが報告書のこの部分に共通するテーマだ。

同報告書が挙げている4つの懸念分野は競争、価値の保存手段としての可能性、流通速度の上昇とプルーフ・オブ・ステーク(PoS)の安全性だ。

1. 競争
ETHの長期的な価値提案に関するひとつ目の懸念は、イーサリアムが直面する、その他のネットワークとの競争だ。報告書はこれらの競合を、既に活気のあるその他のブロックチェーン、近い将来ローンチ予定の「次世代」プロトコル、イーサリアムのフォーク(分岐)版とアマゾンウェブサービス(AWS)のような中央集権型ソリューションに分類している。

「イーサリアムにスケーリングソリューションが完全導入されるのは、少なくとも2021年以降になるだろう」と報告書は述べている。「その前に新たな、スケーラブルな競合がローンチされると予想される。新たなプロトコルは、セカンドムーバーアドバンテージ(二番手として参入することによる利益)の恩恵を受けるだろうか?」

特筆すべきは、イーサリアム自体もビットコインからセカンドムーバーアドバンテージを得ていると見られることが多いことだ。だがスマートコントラクト(契約の自動化)のプラットフォームとしてのビットコインの有用性は、時にあまり評価されないか、見過ごされている。実際、ビットコインとライトニングネットワーク(Lightning Network)は同報告書で、イーサリアムの「未来の競合」に挙げられている。

ここで懸念されるのが、他のプロジェクトがイーサリアムよりも迅速にローンチやスケーリングを行うことができると予想されることで、そうなれば各種デベロッパーがイーサリアムよりもこれらの新しいネットワークに惹きつけられる可能性がある。

ただし同報告書は、一番乗りであることには利点もあるとし 「現在のエコシステムと関連インフラのネットワーク効果や、ブランドという点における心理的な標準であることを考えると、イーサリアムはこの状況から利益を得ることができる」と指摘している。

2.価値の保存に関する批評

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