ヤフー100%子会社であるZコーポレーションが出資する仮想通貨交換業者「TAOTAO(旧:ビットアルゴ東京)」の創業者であり、金融関連研究会社(株式会社シーエムディーラボ )の代表である尹煕元氏が、第3回講演会のゲストとして登壇。お金や経済の話から、仮想通貨(暗号資産)税制に関する貴重な見解を述べた。
尹煕元氏の話
私たちが普段使っている”お金”の定義を再認識するきっかけとなったのが、仮想通貨だと考えている。
あくまで一つの学説になるが、「21世紀の貨幣論」という本を参考にすると、お金はギリシャ時代に端を発する。生物の本能は「弱肉強食」で、物を奪うということだが、知能の高い人間は「物々交換」という手段を覚えた。
交換の記録のために帳簿を使用し始め、帳簿を使用しなくても、財産権を交換しようというのがお金だとされている。仮想通貨(暗号資産)は、これまでの『財産の交換手段であるお金の在り方』を問うテーゼだと認識している。
2008年に公開された「サトシ・ナカモト」の論文は、仮想通貨のバイブルだが、論文の中にブロックチェーンという言葉はない。
通貨の管理をインターネット上のプログラム、アルゴリズムで行ったらどうか?方法論として、暗号技術を使用すれば上手くいくのでは?といった手段の提示であり、「誰がお金を管理するべきなのか」という事を、哲学的に考えさせる論文である。
お金(コイン)を帳簿の補助として使い、その移転の記録を維持させるつけるためのインセンティブ設計に上手く組み込んで、コスト維持の問題を解決している。この大いなる実験を始めているのがビットコインだ。
通貨と資産の概念
今までの仮想通貨は、改正資金決済法で通貨の機能が規定されていた。お金に関する「通貨の機能(カレンシー)」と「資産の機能(アセット)」は、今すぐ使うのか、1年後に使うのかという時間の尺度であり、その両方を併せ持つお金の構造には、ある種の矛盾が生じている。
日本の法律では通貨の機能は決済と貸付で資金決済法、銀行法、貸金業法の下にあり、資産の機能は運用・ヘッジで金融商品取引法と保険業法の下とされてきた。ここに、サトシ・ナカモト論文によって、クリプトの概念が覆いかぶさってきた。(クリプトカレンシー、クリプトアセット)
税をどうするかによって、仮想通貨取引所などが海外に逃げて、ビジネスチャンスを外に逃してしまうかも知れない。逆に、インセンティブが国内にあれば、世界中の技術を国内に持って来るかも知れない。
税は公平でなければならないが、富は偏っている。そのため、経済の財の分布の構造を考えて税制をデザインする事は、有効な方法論の一つと思える。
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