京都観光の定番スポット、嵐山。渡月橋や天龍寺周辺はいつも人でいっぱいですが、「奥嵯峨野」と呼ばれる北のエリアは、中心部とは違って観光客の姿もまばら。

静寂に満ちたこの界隈では、ゆったりとした時の流れのなかで、いにしえの雰囲気を感じることができます。

奥嵯峨野には、小さいながらも個性豊かな名刹が点在。そのひとつが、今からおよそ1200年前に開創された「あだし野念仏寺」です。

「あだしの(化野)」とは、このあたりの地区名のこと。「あだし」には、仏教の言葉で「はかない」「むなしい」を意味し、「化」の漢字には、「生が化して死となり、この世に再び生まれ変わることや、極楽浄土に往来する願い」といった意味合いがあります。

寺伝によれば、あだし野念仏寺は、弘法大師空海が、野ざらしになっていた遺骸を埋葬したことにはじまります。

空海は、土葬の習慣を伝え、この地に寺院を建立。当初は「五智山如来寺(ごちざんにょらいじ)」という名の真言宗の寺院でしたが、鎌倉時代に法然上人がここを念仏道場としたことから、「あだし野念仏寺」と呼ばれるようになりました。

ひっそりとした境内には、8000体を超える石仏や石塔がずらりと並んでいます。

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