日本銀行は17日、『ブロックチェーン技術のスケーラビリティ問題への対応』と題する論文を公開した。同論文では、ブロックチェーンのスケーラビリティ問題(取引処理能力向上に関する技術的な問題)について、概要とこれまで実施された主な対応、現在検討が進められている主な取り組みをまとめている。

同資料ではまず、参加者が自由にネットワークに加わることのできるパブリック型ブロックチェーンについて、『特定の管理者や参加者間の信用に依存することのない分権的な枠組みや、障害耐性、悪意を持った参加者による改竄耐性などがメリットと考えられている』と伝えている。一方で、デメリットについて『パブリック型は処理性能の拡張性が乏しく、暗号資産取引においては処理遅延が生じるようになった』ことを挙げ、この処理能力拡張の難しさがスケーラビリティ問題と呼ばれると言及している。

スケーラビリティ問題の当初の対応としては、『ブロック容量とブロック生成間隔に関する制約を緩和することで、処理能力を高める手法が用いられた』が、『ブロックチェーンの分裂や分権構造の後退といった問題が発生し、処理能力を柔軟に拡張させることは難しかった』と指摘。このため、近年では、『一定の分権構造を確保しつつ、スケーラビリティの改善を図る手法が提案されている』と述べている。

具体的な対応として、(1)ブロック容量の拡大、(2)ブロック生成間隔の短縮を挙げており、この2つはいずれも『既存のブロックチェーンにおける仕様変更を通じて処理能力の向上を図る取り組みであり、オンチェーン・スケーリングなどと呼ばれている』と説明している。

ただし、オンチェーン・スケーリングには、『ブロックチェーンの分裂や拡張性の乏しさといった課題があるため、関係者の間ではこれらに代わる新たな手法を模索する動きが続いている』としており、現在検討が進められている取り組みとして、(1)オフチェーン・スケーリング(ブロックチェーンの外に一部取引を移管する手法)、(2)サイドチェーン・スケーリング(既存のブロックチェーンから新たに構築したブロックチェーンに資産を移管し取引を処理する手法)、(3)シャーディング(検証対象取引とノードを複数のグループに分割し検証作業を分担する手法)を紹介している。

最後に、日本銀行は『決済システムの安全性と効率性を改善していくために、新しい技術の動向やこれが決済手段に与える影響等について十分に把握しておく必要がある』と指摘し、『欧州中央銀行との間で、分散型台帳技術に関する共同調査(「Project Stella」)に取り組んでいるのも、その一例である』と述べている。今後も、『新技術の動向や影響等について積極的に調査を行っていく』との方針を明らかにしている。