仮想通貨(暗号資産)であるビットコイン(BTC)価格は、仮想通貨関連の報道に影響される場合がある。2018年から2019年にかけてたびたび取り上げられた事例に、2009年から2013年まで日本を拠点に営業されていた仮想通貨取引所マウントゴックスによる資産保全目的のBTC売却関連の報道がある。この報道が市場に与えた影響を振り返る。

そもそもの発端となったのは2014年のマウントゴックスのビットコイン流出事件だ。同取引所は2014年2月7日に80万BTC(当時480億円)相当がハッキング被害によって流出したと発覚したことでビットコインの払い戻しを停止。この時点で債務が資産を上回っていた同取引所は民事再生法適用を申請していたが東京地裁に棄却されて資産保全命令を受け、2014年4月より破産手続きを行った。まだ国内外で仮想通貨取引所が少なかった当時マウントゴックスの出来高は世界最大規模であり、これは大きな報道となった。

この潮目がかわったのが2017年のBTC価格の高騰である。2017年1月には1BTC=約1,000ドルだったビットコインは11月末には10,000ドルに迫り、マウントゴックスが保有するBTCを現金化すれば債権者に100%配当が見込めるとして債権者が東京地裁に再度民事再生法適用を申し込むこととなった。

こうした流れの中、2018年3月に東京地裁の関連資料から、マウントゴックスの管財人が2017年9月以降2018年3月までに、約430億円相当の仮想通貨(3万5,841BTCと3万4,008BCH、BCHはビットコインキャッシュの通貨単位)を売却して現金化したことが明らかとなると、各メディアは「2018年初めからのBTC相場下落はマウントゴックスによる売りが影響したのでは」と報じるようになった。2017年には最高で20倍ほど値上がりしたBTCが2018年初頭から急速に値下がりして、3月初頭にはふたたび10,000ドル水準で取引されていたこともこの報道を後押しした。

マウントゴックスの民事再生開始は2018年6月に決定して、同9月には再び同社の2018年3月から6月までの売却額が公開された。この3カ月には、約260億円(2万4,658BTCと2万5,331BCH)が売却された。この売却期間と売却額は9月に公開されたが、各メディアは大口の売却があるたびに「マウントゴックスの売却」をリアルタイムで報じた。マウントゴックスがかつて利用したビットコイン・アドレス(BTCの送金時に利用される文字列)が一部露呈していたことで、外部から大口のBTC流出入が見られていたのだ。この期間、BTC価格は下落相場となった。

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