中国国家情報センターでは、「ブロックチェーン・サービス・ネットワーク(BSN)」という国家主導の基盤サービスを計画している。20年4月時点の最新のBSNのホワイトペーパーによれば、中国政府が制御して中国や海外の参加者がノードを立てて、中国だけでなくグローバルにブロックチェーンサービスの開発やアプリを利用するための基盤インフラを提供することが目的だ。既存のクラウド業者やポータルサイト、開発者などが独自に環境を構築するよりも、BSNを利用することで安価にブロックチェーンを利用する環境が手に入るとしている。

4月に公開されたBSNのホワイトペーパー上では、BSNはコンソーシアム型のチェーン(管理主体として複数の組織が存在するブロックチェーン)と、イーサリアム(ETH)やEOSのようなパブリックチェーン(管理主体の存在しないチェーン)の両方をサポートすると記載されており話題となった。ただし、同ペーパー内では、「BSNは、パブリックチェーンとコンソーシアムチェーンの両方をサポートするが、それぞれのポータルサイトは、置かれている国の法律、規制、ポリシーに従う必要がある。例えば、中国内ではBSN内のいずれのポータルサイトやードでも、パブリックチェーン・ノードの展開・運用は認められない」と書かれており、実質的には中国におけるパブリックチェーンの展開は不可という立ち位置にある。

BSNの公式サイトを確認すると、すでに中国国内では複数のノードが立っている他、海外ではシンガポール、日本(東京)、アメリカ(カリフォルニア)、オーストラリア(シドニー)、南アフリカ共和国(ヨハネスブルグ)でノードが立っていることが確認される。また、ホワイトペーパー上でBSNはコンソーシアムチェーンとしてFabricやXuperchainなどをサポート完了、またはサポート予定であるとしている。

BSNが実際にサポートするパブリックチェーンは何か、サポート状況はどうなっているかといった詳細はまだ公式サイト上では明らかになっていないが、6月29日には暗号資産ファンドDragonfly Capitalの取締役Haseeb Qureshi氏が、Twitter上で「間もなく、BSNで初めてのパブリックチェーンとして、イーサリアムとNervos Networkが統合される」と発言した。先述のホワイトペーパーにNervos Network の名前はなかったが、Dragonfly Capitalは19年12月にNervosに出資しており、関係者であるQureshi氏の発言は関心を集めた。

BSNのホワイトペーパーでは、BSNは「ブロックチェーンのインターネット」を目指すと書かれている。ただし、BSNに参加する前に各種サービスやコンソーシアムチェーンはBSNの標準に合わせる必要がある。また、ホワイトペーパー上には各ノードの役割はアクセス制御にあり、BSNが実現すれば中国がアクセス制御できる「グローバルなインフラ」が実現するとされている。今後、中国以外の国がどのように同プロジェクトに参加していくのか引き続き注目したい。