岸田文雄首相は28日、参院決算委員会でウクライナに侵攻するロシアへの経済制裁を強化するために、今国会で外為法の改正を行う準備を進めると表明した。
岸田首相は自民党の宮本周司氏の質問に対する答弁で、「ロシア経済制裁において金融面で抜け道を与えないよう、暗号資産(仮想通貨)を用いた制裁回避についても、実効性を強化すべく今国会に外為法の改正を行うための準備を進めていく」と述べた。
政府は、米欧などの各国と歩調を合わせてロシア政府関係者らの資産凍結などの経済制裁に踏み切っている。ただ、暗号資産は各国の規制が及びにくく、制裁対象者らは保有する資産やルーブルを暗号資産に変換して制裁から逃れている可能性があると指摘されている。
日本経済新聞によると、24日の主要7カ国首脳会議(G7サミット)で岸田首相は「制裁の抜け道を与えてはならないと確認した」と述べ、制裁を強化する重要性を説いたという。政府は暗号資産の移転先が制裁対象者ではないことの確認を暗号資産交換業者に義務付ける方針を示し、今後も国際社会と連携を図りながら制裁措置を行っていくようだ。
金融庁は14日に、暗号資産交換業者に対して、「ウクライナをめぐる現下の国際情勢を踏まえた対応について(要請)」を発出していた。顧客が指定する受取人のアドレスが資産凍結等の措置の対象者のアドレスであると判断した場合、顧客に外為法の支払許可義務が課されていることを踏まえて、暗号資産の移転を行わないことなどが記載されていた。
一般社団法人日本暗号資産取引業協会(JVCEA)も前日、金融庁並びに財務省から共同で暗号資産交換業者に発出された要請文に対する対応について、「当協会として会員を取り巻く重要課題解決のため設置した会議体のひとつである「トラベルルール対応タスクフォース」において、暗号資産交換業を営む会員がこの要請に適切かつ円滑に取り組むことができるよう必要な検討を開始していく」、と説明した。主な検討項目としては、スクリーニングの確実な実施に向けた各会員のスクリーニング状況の確認、ブロックチェーン解析業者を利用した効率的なスクリーニングの活用可能性の検討などで、随時会員に対して周知、指導その他必要な対応を進めていくようだ。