1911年、埼玉県秩父郡長瀞町(ながとろまち)に上武鉄道(現 秩父鉄道)「宝登山駅」(現 長瀞駅)が開業しました。その際に行われた開通祝賀会で代表演説をしたのは、「近代日本経済の父」と称される実業家、渋沢栄一翁です。

その翌年(1912年/大正元年)、上武鉄道が旅館「長瀞館(ちょうせいかん)」を開業。1913年には栄一翁が鉄道延伸の視察に訪れて宿泊しました。そんな栄一翁も泊まった長瀞館が、読みはそのままに、「長生館」と改称したのは1916年のことです。

創業から110余年、長瀞観光の歴史とともに歩んできた長生館は、すべての客室が庭園と荒川・長瀞渓谷に面しており、国指定名勝「長瀞渓谷・岩畳」を望む眺望が自慢の宿です。

館内に掲げてある「江流有聲断岸千尺」(後赤壁賦・蘇軾)は、渋沢栄一翁の書写です。「岩畳に佇むと荒川がゆったりと流れる音がする。急峻な崖は中国の赤壁の地を想起させる。いつ訪れても飽きることがない長瀞はまさに天下の景勝地である」という栄一翁の想いが込められています。

庭園と長瀞渓谷に面した客室

長生館の客室は全22室。すべての客室から庭園と荒川・長瀞渓谷に面しており、四季折々の風景を楽しめます。今回は、1階のスタンダードタイプの和室(12畳)に泊まりました。

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