■犬をなでるときも緊張感をもってる
──すごいわかります!
増子 でも、それやっちゃダメだって言われたらもうどうにもならないよ。
──勝新太郎とかに怒るのと同じですよね。そういう人だし、そこがいいんだし。
増子 ホントだよ! そういうところがいよいよ締めつけられてるというか。ここからおもしろい人ってもう表には出てこられない時代なのかなっていうか、もったいないよね。
──ショーケンが薬物で捕まって瀬戸内寂聴さんのお寺で修行していた時期に、どうしても観たいライブがあって寺を抜け出したっていうの知ってます?
増子 あ、ホント?
──それで行ったのがPILの初来日公演なんですよ。
増子 ぜんぜん懲りてねえな(笑)。
──そうなんですよ。感動するじゃないですか、「え、あの歌い方ってジョニー・ロットン(当時はジョン・ライドン)の影響もあったの?」っていう。
増子 素晴らしいね。ショーケンの昔のライブ盤とか最高だよね、シラフのわけない(笑)。いまでも聴くけど、ライブ盤はホントに素晴らしいよ。ドアーズと変わらないよ。
──ブレイク・オン・スルーしてジ・アザー・サイドにいってる感じ(笑)。
増子 そう、完全に現世にいない感じだよね。浮き世離れしてるっていうか浮き足立ってる感じだよ(笑)。そして、そのテンションに誰もついってってないっていうのが最高なんだよな。
──数年前のドキュメンタリーとかも最高でした!
増子 俺らの上の世代でおもしろいなと思う人っていろいろいるけど、キレどころがわかんない人ってやっぱりおもしろいんだよね、興味が湧くっていうか。「これ怒んないの?」みたいな。で、「これ怒るの?」みたいな。そういうところがチャーミングだったりするんだよな。
──怖さがどこかにあって欲しいんですよね。
増子 そうだね。なんでもそうじゃない。散歩してるデカい犬とかに、女の子が「よしよしよし」なんて初対面でやってたりするけど、あの犬の瞳の奥にあるガラス玉みたいな目の、おとなしいけど絶対に言葉が通じないな感っていうかさ。
──ダハハハハ! 当たり前ですよ!
増子 あれに恐怖を感じないのかな? それこそキレどころわかんないじゃん。急に来るよ、あいつら。
──大型犬は温和だから、そりゃかわいいし撫でするけど、ケンカになったら確実に勝てないなって正直思いますよ。
増子 そう。なのに、すっごい無防備になってるヤツ多すぎるよ。犬はかわいいし俺も好きだけど、言っても畜生だからね。「ダメだよ」って言ったって止まるもんじゃない。そういう部分だよね。
──そういう緊張感はないのかっていう。
増子 そういうこと。生き物に対してね。
──増子さんは緊張感を持ちながら撫でてるんですか?
増子 もちろん! 必要以上には立ち入らない感じで。まあ、自分とこの犬だったら別よ。
──それはもう上下関係ができてますからね。
増子 そうそうそう。人ん家の犬はちっちゃいのでもダメだね。「よしよし」ってやるけど、常に構えてるね。
──いつ何があってもいいように(笑)。
増子 そう、「来るのか?」って絶対に目は離さないもん。「よしよし」って頭なでたって底知れない目をしてるからね。でも、人間もそうなんだよね。電車とかでも大丈夫かなっていうようなオッサンで底知れない目をしてるヤツとかいるもん。あんなの中学生ぐらいがからかったら、下手すると殺されるよな。
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