■人違いのケンカの手打ちは鍋とビール

──増子さんのバイオレンス話の何がシビれるって、こんなものも実戦で使えるんだって勉強になることですよ。

増子 ああ、いろんなものがあるよ。シュガーポットとかね。

──そっち系じゃなくてプロレス技とかですよ!

増子 ああ、ブレーンバスターはすごかったね。

──ストリートファイトでブレーンバスターが出せるとは思わなかったんですよ。

増子 あれは効いたね、すげえ効いた。あとジャイアントスイング。ジャイアントスイングすごいよ! 伸びたまま戻れないんだよ、遠心力で。だから、振り回されながらも「コノヤロー!」って身体を起こしてズボンとかつかもうとするんだけど、たどりつく前に手を離されちゃうから。あれ大ダメージよ! 背中がアスファルトとか砂利でTシャツ穴だらけだもん、ザザーッとなっちゃって。

──プロレスはマットの上でやってるから安全なんですね。

増子 そう、あれは恐ろしい! あとブレーンバスターは縦に落としたら絶対ダメだからね。

──垂直落下式なんてストリートファイトでやったら死にますよ!

増子 絶対ダメだよ、死んじゃうよ。重さ全部が首にくるから。あと首投げもそうだよね。ちゃんと「投げるよ」って言ってくんないと、ヘッドロック逆にされてそのまま投げられたら首ズレるからね。俺もそれでけっこうズレたから。渋カジと7対1でやられて、人違いで。

──え!

増子 たいへんだったよ。とりあえず、なんとかふたり動けないようにはしたんだけど(あっさりと)。「よく顔を見ろ!」っつって。でも、ものすごいいろんなとこから蹴られて、鼻も折れちゃったし服もビリビリになったけど人違いってわかって、向こうも「すみませんでした」って言うから、「すみませんじゃねえだろ! とりあえずそこで奢れ」っつって鍋を食わせてもらったよ。

──ダハハハハ! その着地のさせ方は、さすがすぎますね(笑)。

増子 「お兄さんすごい強いっすねえ!」「強いっすねえじゃねえよ、おまえらがやってきたんだろ!」って。キムチ鍋を食ってビール1杯飲ませてもらって、「じゃあ、これで忘れてやるわ」っつって。そのあとドロップハンドルの自転車で帰ったの、服ボロボロでゾンビみたいになって。通りすがりのヤツ、ビックリだよ。鼻血もすごいし。まあ、鼻は折れても自分で治せるからね。俺、2回折ったけど、曲がっちゃったヤツを自分でグキッてやったら治る。ちょっと鼻が高くなったもんね、マジで。

──そこはプラスになった(笑)。

増子 プラスになった。「あれ? ちょっと高くなったかな」っつって。治ると思わんかったな。

──そこまでやられても、そうやって和解できるのが男気なんですかね。

増子 そうだね、意地っつうかね。あれのおかげで首ホントにおかしくなったからね。

──首とかシャレにならないですよ!

増子 シャレになんないよ。まあ、死なないでよかったなと思って。言っても俺もやったから。

──だから鍋でチャラ。

増子 そう、「鍋でいい」って言って。そんなもんだよ、本来は。恨みとかあってやったわけじゃないからさ。

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