■守りに入らず好きにやったほうがいい

──断る仕事ってどんなのがあるんですか?

増子 あんまりないかな? いわゆる政治絡みとか思想絡みで、そこを肯定することによってそっちに全部与してるみたいに思われるのは嫌だなっていうのは断るけど。要はいろんな主義主張があって、政治的なものも合わせて思想があるけど、100パー「これだ!」って思えるのはそうそうないじゃん。この部分ではこっちに賛成だけど、この部分ではあっちに賛成だっていうのがあって、俺は完全に俺党の総裁だから、俺党以外にはないわけ。

──支持政党は。

増子 そうそう、俺しかいない。それを考えると、そこらへんはちょっと乗っかりたくないなっていうのがあるからね。

──まあ、増子さんは自由ですもんね。アナーキーとスターリンに心酔して自衛隊に行くっていうのがまずおかしいわけですから(笑)。

増子 そう、もうわけわかんない(笑)。あと変にヒューマニズムっていうかな、人情味あふれる的なものにはあんまりいかないようにはしたいなと思ってる。そのぐらいだね。あとは特にないかな。おもしろそうだと思えばやるね。

──それこそアイドル絡みとかの仕事も偏見もなくガッツリやる人ですからね。

増子 そうだね、楽曲提供でもおもしろいよね。自分たちが球を投げても絶対に届かないとこまで届くわけじゃない。それは腕試しと同じで、ここを介して俺らの楽曲がどこまで飛ぶのかなっていうのが見られるのがおもしろいよね、音楽を作る者としては。あとアイドルの子らってすごい一生懸命じゃない。あれは胸を打たれるよね。いろんな葛藤もあるだろうし、多少の操られてる感があるのが最高なんだよね。そこがないと俺の思うアイドルではないね。

──完全に自分発信になっちゃうとアイドルという枠ではないですよね。

増子 そう、バンドとかに近いものになっちゃうから。ある程度の縛りがあってっていうか、これやりたくないんだろうなっていうのが見えてるのがたまらないっていうのはあるよね。

──そうです。

増子 そして、運営黒いなっていう(笑)。

──そこも見え隠れしますからね(笑)。

増子 いまはだいぶ落ち着いたけど、アイドル戦国時代みたいなのって運営の軍人将棋みたいなもんで、みんながいろんな駒を進め合って戦略でやってきてるのがおもしろかったね。結局、駒が言うこときかなくなっちゃって、王将が丸裸になって終わりっていうのもあって。あれはバンドと違うんだよね。

──お金をごっそり抜く悪い大人がいたりして。

増子 そう(笑)。要は、ビジネスのために勝ち進んでいこうっていうゲームじゃない、うしろにいる人たちは。でも、そこのひとつの武器としてオファーしてくれてるんだなと思うと面白いよね。ここはひとつガツンとかましたいなと思ったりするから。

──ただ、バンドを続ける以上にアイドルを続けるのはたいへんな気がしますね。

増子 たいへんだよ、自分たちの意思だけじゃないから。でもホント、楽しいよね。人間なんていつどうなるかわかんないし、いくつで死ぬのかもわかんねえから、つき合いもなるべく楽しくいきたいじゃない。バンドなんていうのは本来チンピラの始めたもんだから、守るべきものも残すべきものも本来はないんだよ。ある程度うまくいっちゃったらそれをキープしたいと思う気持ちが出てくるじゃない。それは一番の敵だね。金が入ったら次のおもしろいことに全部遣うべき。

──守りに入らずに。

増子 そう。だから金が入れば次のゲストにオジー・オズボーンを呼ぶのに全部遣ったりするっちゅうことだな。それくらいじゃないとおもしろくない。オジーを呼ぶのに500万かかるとしたら、300万残して200万でほどほどの人を呼びましょうじゃつまんない。500万にさらに自腹で100万足してオズボーンズを、オジー一家を呼ぶっていうほうがいいじゃん。そのぐらいじゃないと。それでいいと思うんだよね。なかなか自分でこれはおもしろいなっていうのを続けていくのは生活とか考えるとたいへんなことではあるのかもしれないけど、できないことじゃないから。まともとかまともじゃないなんて線引きはそれぞれの人がするわけで、一定の基準ってないじゃん。だから好きにやったほうがいいと思うんだよな。

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