■バンド休止期に生きるための覚悟を学んだ
──バンドを休んでる期間の経験は相当大きかったと思いますよ。
増子 そうね。これからどうやって食っていこうかなっていうさ。いろんなことやってみないと何が向いてるかわかんないから。ただ、そのへんの仕事は自分に向いてないっていうのはわかったね。すごいシビアな世界だから。
──包丁の実演販売とかは向いてたかもしれないけど。
増子 そうだね。テキ屋はホント向いてなかった。あれは人の心があるとできないね。
──そのあとバンドに戻ってくるとホントに楽しくてしょうがなかったんじゃないですか?
増子 そうだね、平和だなと思って。これぞ人の暮らしだと思った、ホントに。
──命のやり取りとか考えなくていい世界。
増子 これぞ人間の暮らしだし、すごく楽しいなと思ったね。ただ、休止のあいだにいろんなことやったおかげで、働いて金を稼いで食っていくっていうことのたいへんさも学んだし。こういう、特になんの能力があるわけでもない、学力があるわけでもない人間が暮らしていくっていうのは、とりあえずなんでもやって生きていかなきゃならないっていう覚悟が必要なのと、その覚悟さえあれば食う分ぐらいは大丈夫かなっていう、その両方はわかったね。
──この懐の深さがあるから「兄貴」と呼ばれるのも納得できるんですけど、増子さんの兄貴っぷりで一番シビれたのがソウル・フラワー・ユニオンの奥野真哉さんがツイッターで書いてた話で、つき合って間もない彼女に「メリークリスマス! 早く会いたいなあ」ってメールしたつもりが、間違って増子さんに送ってて。
増子 そうそうそうそう(笑)。
──そしたら「おうメリークリスマス。帰ったらのもうぜ」って返ってきたって話で(笑)。
増子 なんであいつ俺にメリークリスマス送ってきたのかと思って。じゃあ帰ったら飲むかって、それしか返しようがないからね。
──さすがだと思いましたよ。これすら受け止めるんだっていう。
増子 ハハハハハハ! なんだよ、俺にじゃなかったのかよっていうさ。
──昔から兄貴体質なところはあったんですか?
増子 そんなことはないだろうけど、弟(増子真二)がいるからね。弟がデビュー早かったっていうか、DMBQがガーッといったのが早くて、会う人がみんな「兄貴」とか「お兄ちゃん」って言うようになってからの話だから。
──なんとなくみんなの兄貴な感じになって。
増子 だから単純に真二の兄貴ってだけだったんですよ。こういうキャラクターでいきたいとか思ったこともないし、なんでもやるね、おもしろそうだったら。これはおもしろくねえなと思ったら、いくらもらってもやらないけどね。まあ1億くれりゃやるけど。でも、そんなもんじゃない? そういうキャラを演じる的なものがないね。基本、どうとでもしてくれと思って生きてるからね。
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