賄賂にはもちろん送る側、受け取る側双方の腐敗があるわけだから、この佐野氏側だけの問題ではもちろんない。だが、大学がいま置かれている人口減少の中での経営の困難につけこんだ、悪質な文科省幹部職員たちの腐敗“貴族”ぶりをあらためて確認する思いである。

厳しくこの事件の背景を明らかにしていくべきだろう。と同時に、文科省の肥大した大学への権限の見直しをすべきだ。一例だが、この佐野容疑者が山梨大学へ副学長として「出向」としていき、そこで「箔」をつけたことも問題視すべきだ。例えば、大学入試センターでも出向扱いとして、文科省の役人が理事として勤務している。大学もまた大学入試センターも行政から監督される側であり、監督される側とする側が「出向」という形で一体になるのは望ましくない。

文科省貴族たちの腐敗は、最近では、前川喜平氏が事務次官時代のときに明らかになった天下り斡旋問題がある。吉田大輔元高等教育局長が在職中に、利害関係のある私大に就職あっせんを同省の関係部局に依頼し、そして再就職を実現した問題を契機としたスキャンダルである。しかも同じような手口やまた文科省役人たちのOB組織なども利用してのまさしく省庁をあげての天下りであった。

天下りと今回の「裏口入学」もともに大学行政に対する文科省の「権威」を利用した点では同じである。もちろんこの「権威」は、あるとするならば、国民がこの官僚たちに託した仕事でしかない。その意味では、国民から請け負った仕事、その財産を不当に私物化しているといっていい。まさに国民に巣食う害虫たちである。

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