中国当局がブロックチェーンを規制するという報道が相次いでいるが、ブロックチェーンとは、そもそも政府の管理が届かない、非中央集権的な分散型の技術だ。

中国は既にインターネットの情報の流れを規制し、本土では多くのサイトへのアクセスを禁止している。果たして、ブロックチェーンも管理下に置くことができるのだろうか。

既に当局は本腰を入れている。国家インターネット情報弁公室(CAC)は10月19日に、ブロックチェーンの情報サービスを規制する法案を発表。政府のサイトでパブリックコメントを募集した。

国務院新聞弁公室の傘下にあるCACは、中国のIT規制のトップ機関だ。8月から主任を務める荘栄文は、中国共産党中央宣伝部の副部長でもあり、習近平・国家主席に近いとみられる。したがって、今回の法案は党中枢の意見を反映していると考えてかまわないだろう。修正を経て成立すれば、ブロックチェーン業界に対する中国政府の規制戦略の柱となる。

一般に、法規制のパブリックコメントの募集期間は、政府がどのくらい急いでいるかという意向を反映している。今回の募集は11月2日までだった。草案の発表から1カ月足らずで、年内か来年早々にも規制を導入したいという強い意欲を物語っている。さらに、規制案の内容は熟慮されたもので、意見を募っても大きな変更は必要ない、という意思表示でもあるだろう。

中国政府がブロックチェーンを警戒していることは明らかだ。新しい規制の導入については記者会見が数回行われたが、公に議論することは政府が禁止している。しかし、中国のネットユーザーは、イーサリアムのブロックチェーンにトランザクションとしてコメントを記録するという手法で、当局の検閲をかいくぐる。北京大学で20年前に起きた大学教授による性的嫌がらせや、ワクチン製造会社によるデータ捏造のスキャンダルも、イーサリアムのブロックチェーンに詳細な情報が記された。

イーサリアムの技術は不変性が高く、ブロックチェーン上のコンテンツをさまざまなブラウザで見ることができる。そして、ブロックチェーンに記録されたトランザクションを、当局が書き換えたり削除したりすることはできない。

いったん記録されたデータを改ざんできないことは、イーサリアムだけでなく、ビットコインなどパブリックチェーンに共通する特徴でもあり、中国の情報統制を打ち破るひとつの手段になる。ブロックチェーンの人気が高まるにつれて、多少の技術的なスキルは必要だが、より多くのプラットフォームが情報を拡散させやすくなるだろう。このような情報共有は、気に入らないコンテンツは削除することが当たり前という中国政府に大きな脆弱性をもたらしている。

次ページ
  • 1
  • 2