「金融活動作業部会(FATF)」とは、各国の資金洗浄(マネーロンダリング)対策などを審査する国際的な組織である。30年前に7つの主要国グループによって結成され、37の加盟国でマネーロンダリング防止法の定期的な評価を行っている。
6月に発表された、仮想通貨事業に対しての新たな基準は「トラベル・ルール」とも呼ばれていて、仮想通貨関連事業者による仮想通貨の送・受金の際に、送り主と受取人の個人情報を記録するという厳格な国際基準だ。
関連事業者には、仮想通貨取引所、デジタルウォレットのプロバイダー、その他の企業が含まれる。
この新基準も影響し、匿名性が高い通貨銘柄では、取引所での上場を廃止されるケースも出てきた。対応方針については、各国の取引所ごとに異なるものの、今後の注目すべきケースの一つにあがるだろう。
課題は顧客データの安全で標準化された送受信
FATFの新基準では1996年以降、米国の金融機関にも適用されているのと同じように、仮想通貨業者も1,000ドル(約10万8千円)以上を送金する際に顧客データを他の金融機関に送信しなければいけない。
だが、この基準を遵守するには様々な難題も残されている。現在、仮想通貨関連事業者には、顧客のデータを互いに送受信するためのインフラがない。また企業間で、データを共有するシステムの費用を誰がどう負担するのか、システムをどのように管理するかについての合意形成を行う必要もある。
仮想通貨取引所コインベースの最高コンプライアンス責任者、Jeff Horowitz氏は(新基準への準拠について)「解決は可能」だが「現在顧客データを共有する方法は現在ない」と述べている。Horowitz氏は現在、基準への遵守計画のために、他の取引所とのワーキンググループに参加していると語る。
グループは顧客データを安全に、かつ標準化された方法で送受信する方法を開発することに取り組んでいる。最適な道筋を見つけ出すためには、数か月かかる可能性があると業界幹部は述べている。
特に、トラベル・ルールによるデータ共有先だけが情報を閲覧するようにすることが重要視されている。顧客データが不適切な相手に渡ってしまうことを避けなければいけない。
金融活動作業部会のシニア政策分析官Tom Neylan氏によると、新基準は、マネーロンダリングの他にも、テロ攻撃の後で、制裁の対象を絞るためにも準備されているという。
新基準の問題点
今回の基準に対しては、業界内で批判も挙がっている。
• スタートアップが多い業界において費用が大きくなる。
• 匿名取引を一定の文化的価値とする業界にとっては、ふさわしくない。
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