山科にある「随心院」は、知る人ぞ知る小野小町ゆかりのお寺。991年に創建された真言宗善通寺派の大本山で、創建当時は「牛皮山曼荼羅寺」と称されていました。

京都市内中心部から離れているため観光客の姿も少なく、堂内を歩けば木の床がミシミシと音を立てる…数百年も時が止まっているかのような随心院は、正真正銘の穴場です。

そんなお寺が「アート」なワケは、「能の間」に奉納されている襖絵「極彩色梅匂小町絵図」。「だるま商店」という2人組の若手アーティストが描いたもので、2009年に完成しました。

「はねず色」と呼ばれる鮮やかな薄紅色を基調としたこの作品は、はっとさせられるほど色鮮やか。その名の通りの極彩色に目を奪われ、一瞬にして物語の世界に引き込まれてしまいます。

「極彩色梅匂小町絵図」に描かれているのは、小野小町の生涯を中心に据えた平安時代の日本。

小野小町が秋田県で生まれて生活する様子、仁明天皇のもとで宮仕えをする様子、宮仕えを辞し小野の地で過ごす様子、小野を出て諸国を放浪する様子などが、神話を交えつつ表現されています。

くっきりと描かれた箇所と、ぼんやり描かれた箇所が幻想的なグラデーションを生み出し、夢と現実の区別もつかなくなってしまいそうな極彩色の世界にようこそ。

・東福寺

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