板倉は、穀物や野菜などを保存食として、また翌年にまく種として保存するほか、結婚式や法事に使う家具類や食器といった大切なものをしまっておくのに使われました。主屋から少し離れてつくられているのは、万一の火事の際に延焼を防ぐためだとか。
時代の移り変わりとともに職を求めて種蔵集落を離れる人もいて、現在、種蔵地区の住人は8世帯15人です。しかし、「住む家を壊すようなことがあっても倉だけは守れ、倉は食物や種物を保存しておいて、家族の命を守る宝物だから」という先祖からの言い伝えのためか、人が住まなくなった家は処分されても、板倉だけはそのまま残されています。
種蔵集落で暮らす人は少なくなりましたが、「飛騨市ふるさと種蔵村」という、種蔵を愛する方で組織する架空の「村(組織)」が開かれました。希望者は誰でも村民となって、集落に残る原風景を後世に残すために、景観資源の保全活動に参加することができます。
飛騨市ふるさと種蔵村 2024行事カレンダーにある通り、コンサートや新そばまつりといった行事も予定されており、いわゆる「観光」の枠を超えた体験ができることでしょう。
【集落詳細】
住所 岐阜県飛騨市宮川町種蔵
アクセス JR高山本線坂上駅から車で15分、飛騨古川駅から車で40分
飛騨みやがわ考古民俗館は、豊富な民俗資料と考古資料から、飛騨の人々がいかに山間部で生きてきたかを学ぶことができる施設です。
次ページ