行動力と根拠のない自信を持っていた
──そういうの見てもホント思うんですよ。いわゆるYouTuberとかもボクの趣味ではないけれど、だからって否定するべきものでもなくて。あれだけ毎日動画を撮って編集してれば何かの才能を持ってて伸びる人も間違いなくいるだろうなって。だって岡本太郎コミュの時点で上田監督の才能を見抜いてる人はいなかったと思うし、人間どうなるかわからないんですよ。
上田 ああ、『コブラ』でしたっけ? 買って読みました。
──……『コブラ』? もしかして『漫画ゴラク』(※吉田はコラム「聞き出す力」を連載中)ですか?
上田 そうだそうだ、読みました。そこにも、そんなふうに書いてもらってましたね。
──痛い人間をただ「痛い」で片付けるのはよくない、痛い人間はとりあえず行動力だけはあるので、それが正しい方向に向けばいいし、たぶん方向が間違ってるだけなんだろうなって書きました。とにかく、異常な行動力ですもんね。
上田 そうですね。行動力って自信やと思うんですよ。自信があるから。
──イカダで琵琶湖を渡るときも「絶対に死なないから大丈夫」って仲間に言い切っちゃうような無根拠な自信が。
上田 そうですね。
──mixiで叩かれた時点でも上田監督は将来の夢について書いてたわけじゃないですか。まずはカフェバーを成功させて、会社組織にして映像事業を作って、とか。
上田 秘密基地にして、みたいな話でしたね。
──正確には「店を開業→軌道に乗る→会社にする→映画&音楽事業部を作る→店を任せ、俺は映画監督に→俺しか撮れない映画を作る→世界を震撼させる→未定」ってことでしたけど、その時点では誰もが鼻で笑うようなビジョンを語ってたわけで。
上田 フフフフ、はい。だから行動力と根拠のない自信に満ちあふれてたんでしょうね。
──それで結果を出す人がいるっていうのは、いい話だと思うんですよ。このときは間違った方向での行動力と根拠のない自信だけが目についたから、誰もが何かを言いたくなってたわけですけど。
上田 そうですね。そのあとTOEICに挑戦するとか、いろんな挑戦をしてはけっこうすぐやめるんですよ。
──映画で海外進出するためには、まず英語がちゃんとできなきゃいけないってことで「2010年の3月にはTOEICで950点以上を奪取!」とか目標を立ててましたよね。
上田 やっぱりそれは結果が出ないからすぐやめちゃうんですけど、そういうところはありましたね。すぐ手を出しては結果が出なくてなんだかんだ言い訳してすぐやめて。映画に集中してからです、変わったのは。
──mixiの時点で注意されてましたからね。「あなたは遠回りしすぎです。映画監督になりたいなら映画をちゃんと撮るべきだ、カフェバーにそんなに興味ないんだったらやるべきではない」みたいな感じで、いろんな人が真っ当な注意をしてましたよ。
上田 ホントそうですよね。でも、そこで聞く耳を持ってる人であればあんなことはできないだろうなとは思います。
上田慎一郎(うえだしんいちろう)●1984年、滋賀県出身。中学時代に自主映画の制作を始める。2010年に映画製作団体PANPOKOPINAを結成。長編映画『お米とおっぱい。』、短編映画『恋する小説家』、『ハートにコブラツイスト』、『彼女の告白ランキング』、『Last WeddingDress』、『テイク8』、『ナポリタン』を監督。2015年にオムニバス映画『4/猫ーねこぶんのよんー』の1編『猫まんま』で商業デビュー。妻である、ふくだみゆきの監督作『こんぷれっくす×コンプレックス』、『耳かきランデブー』ではプロデューサーを務åめている。2017年製作の『カメラを止めるな!』が口コミによる特大ヒットを飛ばし、日本中で大ブームを巻き起こし続けている。
●映画『カメラを止めるな!』
山奥の廃墟で自主制作の役者とスタッフたちがゾンビ映画を撮っていた。そこへ本物のゾンビが現われるが、狂気にとりつかれた監督はカメラを回し続け……。映画専門学校ENBUゼミナールのワークショップ「シネマプロジェクト」の第7弾として製作された。当初は都内2館のみでの上映だったが、口コミで評判が広がり、全国で拡大公開されている。
監督・脚本・編集:上田慎一郎
出演:濱津隆之、真魚、しゅはまはるみ、長屋和彰、細井学、市原洋、山﨑俊太郎、大沢真一郎、竹原芳子、吉田美紀、合田純奈、浅森咲希奈、秋山ゆずき
製作:ENBUゼミナール
配給:アスミック・エース=ENBUゼミナール
大ヒット公開中!
(C)ENBUゼミナール