ピンチのときに仲間と笑ってるのが一番幸せ

──アイドル界の評判のよさも異常だし、口の悪そうな人たちもみんな絶賛するっていう状況で。

上田 逆にいいことばっかり起こりすぎてると、ちょっと不安になるときもあるんですよ。

──いままでひどい目に遭い続けてきた人だから。

上田 そうです。「ヤッベー!」って言いながら笑いたいっていう。それも岡本太郎の影響かもしれない。「命の危険にさらされたとき、一番人の人生が輝くんだ」みたいなことを書いてるので。だから、それを共有できる仲間と、「ヤバいなあ、来たねピンチ」って笑ってるときが一番幸せだったりするんですよ。今回、想像を超えるレベルで一気にいろんなことが起きてるんですけど、たとえすべてを一気に失ったとしても、ホームレスしていた経験があるので、もう一回あそこからやればいいかっていうところもあるんですよね。

──適度に反省しながらも反省しきってないというか、相変わらずな感じでいいですよ。

上田 そうですね。ちょっと気が楽になりましたね、いろいろ。

──とりあえず動いたもの勝ちだなっていうのはすごく思いました。「お金がないから映画を作れない」みたいに言い訳してる人は、そんなこといいからとっとと動けって話で。

上田 そうですね。映像業界ってけっこうお金がないとか長時間労働だとか、悲観する声ってけっこうあるじゃないですか。僕、あんまり感じたことなかったんですよ。それは思考の問題なんだなと思いますね。すごい楽しいことしかないけどなと思ってて。

──ほかの仕事で自分をブラックな状況にずっと追い込んできた人じゃないですか。ろくに寝ないでひたすら仕事したりとか。それと比べたら何の問題もない、と。

上田 そうですね。たぶんしたくないことをしてるときにキツいんやと思いますけどね、したくないことをあんまりしてないので。

──わかりました。これなら大丈夫そうですね。

上田 面接みたいですよ! 学校の先生かと思いました、「大丈夫そうですね」って(笑)。

──それで実際、岡本太郎は超えられました?

上田 いや、超えてはないでしょうね……。

<了>

 上田慎一郎(うえだしんいちろう)●1984年、滋賀県出身。中学時代に自主映画の制作を始める。2010年に映画製作団体PANPOKOPINAを結成。長編映画『お米とおっぱい。』、短編映画『恋する小説家』、『ハートにコブラツイスト』、『彼女の告白ランキング』、『Last WeddingDress』、『テイク8』、『ナポリタン』を監督。2015年にオムニバス映画『4/猫ーねこぶんのよんー』の1編『猫まんま』で商業デビュー。妻である、ふくだみゆきの監督作『こんぷれっくす×コンプレックス』、『耳かきランデブー』ではプロデューサーを務åめている。2017年製作の『カメラを止めるな!』が口コミによる特大ヒットを飛ばし、日本中で大ブームを巻き起こし続けている。

●映画『カメラを止めるな!』

山奥の廃墟で自主制作の役者とスタッフたちがゾンビ映画を撮っていた。そこへ本物のゾンビが現われるが、狂気にとりつかれた監督はカメラを回し続け……。映画専門学校ENBUゼミナールのワークショップ「シネマプロジェクト」の第7弾として製作された。当初は都内2館のみでの上映だったが、口コミで評判が広がり、全国で拡大公開されている。

監督・脚本・編集:上田慎一郎
出演:濱津隆之、真魚、しゅはまはるみ、長屋和彰、細井学、市原洋、山﨑俊太郎、大沢真一郎、竹原芳子、吉田美紀、合田純奈、浅森咲希奈、秋山ゆずき
製作:ENBUゼミナール
配給:アスミック・エース=ENBUゼミナール
大ヒット公開中!
(C)ENBUゼミナール