3月下旬、モリカケ問題を巡る財務省ねつ造問題などを受けて、永田町で大きな騒ぎが起きた。これは野党というよりも与党内の反主流派(党内野党)が巻き起こした騒動であったともいえる。現在、与党は衆参共に過半数を得ており、予算を間違いなく通せる陣営となっている。予算には予算3法案と呼ばれる予算そのものと、ガソリン税や地方公布税など毎年更新の必要な予算関連法案があり、前者は憲法の規定(衆議院の優越)により衆議院通過後30日で自動成立するが、後者は自動的には成立せず、衆参両院の議決が必要なのである。このため、この時期は予算を使った与野党の攻防が開かれるわけであるが、現在の議席状況では野党にはそれもできない状態なのである。 

しかし、与党第一党の自民党では今年の秋に総裁選挙が開かれることになっている。今回の混乱は、自民党の党内野党が引き起こした側面があり、テレビや報道などでよく見る『党内からも批判が出ている』という発言の主は、党内野党の人達の声であったわけだ。ご存知のように自民党には派閥があり、一つの政党のようになっている。民主党政権3年3か月、安倍政権5年3か月、この間、自民党内の党内野党に位置付けられてきた人たちは、要職がもらえず、党内で冷や飯を食わされてきたわけである。

また、一つの政権が永くその地位にあることで、大臣適齢期(衆議院当選5回以上、参議院当選3回以上)の人達が大臣の職に就けない状態にある。その数約60名、そのうち、半数近くは自らの理由(身体検査で問題がある)などで、因果を含めることができるが、そうでない議員は、期待があるだけに地元で支持者たちに責められ続けているわけである。

この様な人達が、安倍政権を公然と批判したわけである。また、麻生副総理への批判も、確かに所轄大臣であることも確かだが、それ以上に批判が出ていたわけである。これは安倍総理の出身派閥である「清和政策研究会」(96名)と麻生副総理の「派閥志公会」(60名)。そして、その関連議員を入れると、二つの派閥で180人近い数となり、この二つが連携する限り、他の候補は勝てない構図であったからなのだ。だから、メディアや親しい記者などを利用し、不仲説を流し、引きずりおろしを画策していたわけである。

しかし、その策略も今のところうまくいっていない。3月25日自民党、党大会が開かれたわけだが、基本的にすべて執行部一任となり、党大会前の総裁選挙出馬声明を予定していた石破氏はそれを実現できなかった。そして、党決定が明確になったことで予算関連法案の審議も進み、野党と党内野党にとっての最大のカードもなくなったのである。しかし、党内の不満はまだ収まっておらず、派閥の数取りゲームが始まっている。これを理解すると永田町が見えてくる。

次回は、新聞は報じない派閥の仕組みについてお話しします。