■「一人でも多くの国民を残す」、戦後日本の復興を願われた大御心

そして迎えた8月14日の「最後の御前会議」で決定的な終戦の御聖断が降されます。

「改めて意見を言うので皆、自分の意見に同意してもらいたい」

「ポツダム宣言受諾に賛成である。天皇統治権について不明瞭とする向きもあるが、先方がよこした回答もあれで満足して良いと思う」

「自分の戦争終結に対する決心は、世界の大勢と我が国力の判断によった。よく考えた結果であり、他から知恵を借りたのではない」

「皇室と国土と国民がある限りは、将来国家が成長するに十分な根がある。しかしこれ以上のぞみのない戦いを続けるとすべてを失ってしまう」

「自分が信頼した軍人が武器を取り上げられたり、忠誠を尽くした人たちが戦争犯罪人として裁かれるかも知れないと考えるとたまらない。情においてしのびない」

「しかし、ことここにいたっては国を保ってゆく道はただこれだけしかないと考えるから、堪えがたきを堪え、しのび難きをしのんで、ポツダム宣言を受けることに決心した」

「しかしこれから日本の再建をしなければならない。それは非常に難しく、時間を必要とする。だが国民全体が一緒になり努力すればできないことはない」

「自分も国民とともに努力する」

「日本という国を維持できるのは一人でも多くの国民を残すことである」

先にも述べましたが終戦の大勅は陛下の御発言を全て記し、文語体にしたものです。本土決戦一億玉砕をもって君国に殉ずるという強硬な主張を止められ、生きて国家を維持し、後世に残すことを願われ、これを命じたのです。

終戦の大勅は終戦の宣言であると同時に、戦後日本の復興・再建に宛てた詔書ともいえます。「神州の不滅」を信じ日本人が未来永劫日本人であり続けるための心の拠です。天皇陛下を中心とする道義国家再建の大切さと難しさを説き、それでも君民一体となって世界に遅れず「国体の精崋を発揚」する日本の道をお示しになられたものだと信じます。

教育勅語に加えて、終戦の大勅は今後私たち日本人の大切な道しるべとなることでしょう。この「終戦の大勅」はネット上で簡単に閲覧可能です。また、多くの現代語訳や解説がなされていますので、改めて一読されることをおすすめします。

戦後70年に思う 「終戦の詔書」に残る深い傷痕 東京大学名誉教授・小堀桂一郎
https://www.sankei.com/smp/column/news/150803/clm1508030001-s.html
2015年8月3日 正論

終戦という未曾有の国難にあって、御自身や皇室のことは一切考えず、ただ国民を思い、国民を案じ、国民を心から信頼され、国家の存続を願われた昭和の大帝。

ことしのこの日もまた蝉時雨のなか、天皇陛下の大御心に触れる喜び、日本人であることの感謝を胸に「美しい祖国日本」へ思いを馳せたいと思います。

その建設を悲願としつつも、果たせぬままに散華された英霊の御霊とともに。