ビットコイン・バブルが起きた背景には、世界的なカネ余り現象の影響もある——学歴も金融リテラシーもある何人かの友人が、そんなことを言っている。世の中に流通するお金が増えれば、あらゆるものの資産価値が上昇するのは当然だというのだ。

2008〜09年の金融危機後、大規模な量的緩和策(QE)によって世界経済に莫大な流動性が供給された。それが仮想通貨にも流れ込んできて、法外な高値につながったと、彼らは言う。債券に投資したし、株も買い戻した。「もう買うものがない」から、仮想通貨でも買ってみるかとなったというのだ。

筆者自身は、量的緩和と仮想通貨の価格の間にさほど大きなつながりはないと、以前は思っていた。仮想通貨は極めてニッチな市場だからだ。だが、あるチャートを見て、少し考えが変わってきた。

そのチャートは、米国のマネタリーベースと米財務省一般勘定(TGA)の動きと、ビットコインとS&P500種の値動きを並べている。TGAが興味深い理由は後で触れることにして、ここではマネタリーベースが流動性とおおまかに一致することを述べておきたい。

各国の中央銀行は政策措置を取ることにより、通貨供給量を調整する。その最大の手段は、金利だ。しかし景気がひどく悪化して、金利がすでにゼロまたはマイナス圏にあると、中銀は民間からの資産買い取りという手段に出なければならないときがある。すると自動的にマネタリーベースが拡大する。これは一般に、利下げよりも効果が高いと考えられている。

日本で米国ほどQEの効果が見られなかったのは、マネタリーベースの拡大が借り入れ需要の拡大につながらなかったからだ(馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない)。だが米国では、信用乗数が低下してこなかった(つまりにマネーサプライは減少しなかった)。それどころかここ数年、信用乗数は着実に上昇してきた(マネーサプライは増加してきた)。

全体的なトレンドを見ると、まず気がつくのは、QE3(2012年9月発表)のとき、ビットコインもS&P500種も強気相場だったことだ。ビットコインの価格は100倍にも上昇した。とはいえ、当時はまだ非常にニッチで、強気相場の終盤でさえ、その価格は1000ドル前後で、時価総額は約125億ドル弱だった。

ビットコインの売買をしていたのは、主にプログラマーや未来主義者、そしてビットコインの可能性がわかるベンチャーキャピタリスト・タイプのトレーダーだった。だから当時、過剰流動性がビットコイン価格を押し上げたと考えるのは無理があると思う。

だが、その先になると、マネタリーベースとビットコインの相場の関係をはっきり見ることができる。

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